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休職して、大根すって、大根もち食べて

立派な大根が一本98円だった。

特に大根料理を作る計画はなかったけれど、ふと母が作るきんぴらが浮かんでついつい買ってしまった。
すでに右手には買い物袋満タンの食材たち。もうすぐ家に着くし、と左手で大根を握りしめその立派さを痛感しながら見ず知らずの農家さんを想う。
立派になれよーと育て、いざ土の中から出したらこんなに大きくなってたなんて、かなり嬉しかっただろうな。

きんぴらを作るとして、残りはどうしよう。
大根料理のレパートリーはまだ多くない。いつものように豚バラ大根かみぞれ煮にしようか悩んだけれど、普段作らないものを作りたくて大根もちに挑戦してみることにした。

大根もちは今までも何度か作ろうとしたけれど、大量の大根をする時間がなくて諦めていた。
正確には時間はきっとあったので、自分の時間を大根をする時間に割り当てる気持ちがなかったといった方が良い。

大きめのボウルを用意して大根を握り、いざ!とすり始める。
ざりざり大根が消えていって、

大根って意外と液体だなとか

最初に野菜をこんな形で加工しようと思った人はどんな料理を作りたかったんだろうとか

そんなことを考えていたけれど、だんだんと何も考えずに大根をひたすら前後に動かすだけになっていった。
想像よりも早くすりおわって、これなら別に今までも出来たじゃないかと拍子抜けした。

始めれば終わるって何度も学んで何度も忘れているな~といつものように反省をしながら、固かった時代を忘れ去ってどろどろに怠けているような大根を眺める。

もちろん大根おろしとしては怠けているつもりなんてないんだろうけど、歯ごたえがある野菜ってやる気が満ちているように見えるんだよな。

ぼーっと大根おろしを見つめながら
ふと、仕事を休んでいる自分のことを想う。

私も大根おろし状態なのだろうか。

おろされた大根に歯ごたえを復活させることはできるのだろうか。

少し口をとがらせて、大根おろしを絞り始める。
かさが減るうえにパサパサにされていく大根を少しかわいそうと思ってしまったのは、変に愛着が湧いてしまった証拠だ。

あとは片栗粉とだしをいれてまぜる。
もちょもちょしてきた大根たちを丸める。

こんな感じでいいんだろうかと不安になりつつも
バターを温めたフライパンに並べる。

ジュ―ッと焼ける音はいつ聞いても心地いい。
醤油を入れて香ばしい匂いがしたら完成。

あつあつの大根もちを一つ食べてみる。

もちと呼ぶには心細いけど、やわらかくてクセになる。
新しくて良い食感だ。

大根おろしは怠けてなかっただろ~と
大根もちたちが誇らしそうにしてる感じがした。

たしかにね、と力が抜ける。

大根はまだ余っている。
明日はふろふき大根でも作ってみよう。

私にはたくさん時間がある。



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