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今さら聞けない法人の基礎知識Ⅲ 利益の種類

1.粗利(売上総利益)
2.営業利益
3.経常利益
4.税引き前利益
5.当期利益


今回は会社経営にとって大変重要な利益について解説してみようと思います。

一概に利益と言っても、その利益の種類によって儲かっているのか、儲かっていないのか?の判断が変わってきます。

「本業は儲かってるのに、円高で損してるよー」なんて貿易会社の社長さんからよく聞く話です。では、一つずつ解説していきましょう。

1.粗利(売上総利益)

ショッピングセンターなどでお客さんが「これ、材料費10円ぐらいやのに、100円で売ってるやん、ボロ儲けやなー」と言ってるのを見かけます。まさに、この「ボロ儲けやなー」が指す利益が粗利に当たります。決算書等ではこの粗利のことを〝売上総利益“と表します。

この売上総利益は単純に売上(商品が売れた合計金額)からその商品を作ったり、仕入れたりするのに使った金額(これを原価といいますが)を差し引いた残りの額を言います。

売上−原価=売上総利益(粗利)

と表せます。

ついでに原価についても少し触れておきます。(かなりややこしいので、読み飛ばしてもらっても問題ないです)

原価とは、売上を作るのに実際にかかったであろう値段なので、業種によって様々です。

小売業では売れた金額−仕入れた金額で簡単です。

製造業では材料費、製品、商品と工程によって異なるためこれら全てを都合計算しなくてはなりません。これら3つを〝棚卸し資産“と言い、一般的には年度初めに残っている棚卸し資産と年度末に残っている棚卸し資産の差額と、年度中に仕入れた合計額をその年度の原価にします。

分かりにくいので例です。

今年度初め300万の鉄と、500万分の鉄から作ったドライバーがありました。今年一年で2,000万円の鉄を仕入れました。年度末には200万の鉄と100万分の鉄から作ったドライバーが残りました。

この場合原価は

年度初めに残っている棚卸し資産−年度末に残っていた棚卸し資産=どれだけ残ってたものを使ったか?となり、これに今年の仕入分を加えて原価になります。

このドライバー製作会社の場合

(300+500)−(200+100)+2,000=2,500

となり、原価は2,500万円となります。

建築業では材料費以外にも未完成工事や人件費が関わってきます。建築業では年度初めの未完成工事−年度末の未完成工事+人件費等のようにさらに複雑化します。

原価について解説するとさらに複雑化しますので企業で会計を担当しない限りこれぐらい分かっていれば十分だと思います。

売上総利益まとめ

売上総利益は一つの商品を売った瞬間に確定する利益で、その商品単体が会社にどれだけの利益をもたらすかを表します。売上総利益をもとに売上計画や、経費計画、つまり予算を立てるので、まずは売上総利益を理解することは大変重要です。

2.営業利益

次に営業利益についてです。

これはその年に本業でどれだけの利益を出せたかを表します。つまり本業にかかった経費を引いていくら残ったかを表します。

営業利益=売上総利益-販売管理費

で表せます。

販売管理費とは原価以外にかかった経費のことです。例えば、人件費、広告宣伝費、光熱費、接待交際費、原価償却費なんかもこれに含まれます。

営業利益はその年度、本業が黒字か赤字かを表す指標です。

売上総利益の範囲内で経費を使うと営業利益は黒字になるわけです。もし営業利益が赤字の場合〝経費削減しよう“となるわけです。

ここで販売管理費の内訳についても少し触れておきます。(これもややこしいかもしれませんので飛ばしても大丈夫です。)

販売管理費の中には流動費と固定費があります。

流動費とは広告宣伝費や接待交際費等コントロールできる費用です。固定費は家賃や人件費(正社員固定給)等売上や営業状態に関係なく必ずかかる経費です。

売上が上がらない場合、流動費から削減しますが、利益を出やすくしようとすると固定費を下げるのが効果的です。固定費を減らせれば売上総利益が少なくても利益が出やすい会社になります。

営業利益まとめ

営業利益はその年度、本業でどれだけ儲かったかを表す指標です。これが赤字になってしまうと本業のあり方を考えないといけなくなります。営業利益はその年度通知表成績と思うと分かりやすいと思います。ですので、結果(営業利益)をふまえ、次年度への対策を立てる基になる指標です。

営業利益=売上総利益−販売管理


3.経常利益

経常利益は本業に関係のない、しかし法人運営上で出てきた利益と損失(雑収入と雑損失)を加味した利益です。

主なものとして雑収入には保険解約益や、預金利息などがあります。雑損失には借入金利や損害賠償などがあります。円高円安によりもたらされた損益もここに含まれます。

経常利益まとめ

経常利益は法人運営活動で出る最終利益であり、一般的に「会社の利益はいくら?」と聞かれたときに、答えとして使うことが多い利益です。企業の財務報告でも経常利益を報告することが多いようです。ですので一般的に黒字か赤字かの判断は経常利益を基準にしています。

経常利益=営業利益+雑収入−雑損失


4.税引き前利益

ここからは税金計算用の利益計算になってきます。

税引き前利益は法人運営活動と関係のない利益と損失で特に一過性のもの(特別利益と特別損失)を経常利益から加味したものです。

特別利益は不動産売却益や株式売却益等があり、特別損失は不動産売却損や株式売却損等があります。また、退職金の支払いなんかも特別損失に含まれます。

税引き前利益まとめ

税引き前利益は経常利益から一過性の損益を勘案したものです。税金を支払う最終利益となることから、決算対策をする上で重要な利益といえます。法人取引をする上ではこの利益に着目することが重要です。

税引き前利益=経常利益+特別利益−特別損失


5.当期利益

最後に当期利益です。法人活動の中で結果的にこの利益が残らないと会社を存続させることができません。キャッシュフローの計算にも用いられ、実質の儲けを表す指標です。

当期利益の計算は税引き前利益から法人税等を引くだけです。

法人税等は規模、利益金額等により%が違いますが概ね30%程度です。

当期利益まとめ

当期利益は一年活動してどれぐらいの儲けがあったかを表す最終利益です。税金支払い後なので実際に残るキャッシュフローにも直結します。当期利益をしっかり残していくことが法人として長く続く条件になります。

当期利益=税引き前利益−法人税等

利益の種類を説明してきましたが、法人取引をするにあたり、どの利益に訴るか、どの利益を増やす、または減らすためにする提案かを理解して提案すると、経営者の人にもわかりやすい提案になると思います。

経営者の方でも利益を一色担に考えてしまっていて「儲かってるのにお金がない」、「儲かってるはずなのに赤字だ」、「なんでこんなに税金の支払いがあるの?」なんてことになってしまいます。

どの利益が多くてどの利益がネックかを理解すると会社経営のプランニングがより鮮明になります。利益の種類を理解して法人取引の提案、経営を見直してみて下さい。

たくさんの経営者がより豊かになること、法人営業の皆様がより楽しく仕事ができることを願っています!










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