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DBT(弁証法的行動療法)のマインドフルネス研修を受けてきました。

前々から自分の課題

BPD(境界性パーソナリティー障害)に対する支援スキルがないこと。
この課題と真剣に向き合うため、結構な自腹を切って、ついにDBT(弁証法的行動療法)の研修を受講しました。全4日間の講義と予習を一ヶ月間、徹底的に学びました。(この後、改めてプラス4日間の研修に参加しました)

忘れないように理解できたことをまとめておきたいと思います。

図1


DBT(弁証法的行動療法)とは?

DBTは境界性パーソナリティー障害向けに開発された療法です。
BPDの当事者でもあるM.リネハンが創始者です。
BPD患者の自殺行為など問題行動の原因を『情動』に特定していることが特徴的です。(『情動』というと分かりにくいので、ここからは『感情』といいます)

BPD以外にも、衝動性の高さで悩む疾患や障害に効果があるそうです。
ADHD・摂食障害・アディクション・うつ病にも効果があるとのことです。

逆に考えると感情に問題のない人はどんなスキルを使っているか?
①自分自身の『感情』に気づく。
②その『感情』の特徴を知る。
③場面ごとに適切に『感情』にラベリングする。
④その『感情』発生時の対応策を考えて実践する。

これらのスキルを獲得できれば問題行動は驚くほどなくなるとM.リネハンは自身の体験によるエビデンスをもって証明しています!
※M.リネハンもBPDの当事者です。

DBTの考え方は本当に面白いです。                                   
BPD患者は、これらの情動について『学習する機会がなかった』と仮定しています。
だから、
★『スキル』を獲得し
★その『スキル』を使って
★『賢く生きる術』を身に着ける必要がある
何とも教育的というか訓練的要素の強い療法です。

図2


『賢く生きる術』とはどういうものか…?

今までのように、『感情』に飲み込まれた状態で物事を判断することではありません。かといって、自分の心を押し殺してその場に合わせて『合理的』な判断をするってことでもありません。
DBTでは、感情的な心でも、合理的な心でもなく、それを超越したところにある『賢い心』にたどり着くことを目指します。
そのために『マインドフルネス』のスキルを徹底的に学びます。
哲学チック? そうです。弁証法とは哲学用語です。

この話を聞いたとき妻との会話をイメージしました。
「ご近所さんとの付き合いが本当に辛くて…(妻)」
「じぁ 付き合わなきゃイイじゃん(私)」
この日常会話は『感情的な話』と『合理的な話』です。噛み合いませんね…
だから、お互いの状況を興味をもって聴いて、事実と真理を確認する必要があります。
「なるほど。そういうことだったのか!」ってところまで…
弁証法とは、これを自分ひとりでやるバージョンって感じです。
自分ひとりでやるスキルが『マインドフルネス』です。

ここでひとつ。マインドフルネスはリラクセーションの技法だと勘違いしている人がいます。私もその一人でした。
実際には全く別物です。
とくに『DBTのマインドフルネス』は自分自身と徹底的に向き合う技法です。
今まで考えたくもなかった… 思い出したくもない… 
そんな物事とも徹底的に向き合って(曝露して)いきます。

たしかに、マインドフルネスの源である『禅』もリラクセーションではありません。『修行』とその先にある『さとり』ですね。

図3


自分自身と徹底的に向き合うとはどのようなことか?

私には蓋をしておきたいコンプレックスがあります。
実は約20年前、母親に生体間移植で肝臓を提供しました。
お腹にはトータル50cmほどのコの字型の傷が残りました。そして、肝臓を取り出すために肋骨を折ったので、骨が内臓や肉に刺さっているような感覚に日々悩んでいます。胆のうも全摘しました。また、ホルモンのバランスが崩れたせいか、めちゃくちゃ太りやすくなりました。

お陰様で母親は元気になったので嬉しかったです。
でも、会うたびに「太った」だの「健康に気をつけろ」だの言われると(お前のせいでこんなんなってんだよ…)って思ってしまいます。でも、そんなこと思っちゃいけないので、怒りを堪えて、感情に蓋をして、向き合わなくて済むように麻痺らせて、考えないようにしてました。

あれから20年経った今… 
DBT研修にてマインドフルネスのひとつ『ワイズマインド呼吸法』をしていると、どうしても手術痕のこと、体型のこと、母親のことを考えてしまいます。
20年蓋をしてたのにいよいよ向き合う時が来たか… 。
勇気を出して、興味を持って、思い切って、真実の自分と向き合います。

DBTのマインドフルネス『ワイズマインド呼吸法』では、呼吸に意識向けながら『思考・感情・身体感覚・イメージ』を観察して、今、この瞬間の事実を確認します。

本来、マインドフルネスは行為そのものに集中します。つまり、呼吸であれば呼吸に集中するのですが、最初の内は思考が巡ると思います。意識的に呼吸に戻ったり、身体感覚を感じたり、映像が飛び込んできたらイメージをキャッチしたり、そしてそれらに引っ付いている感情を確認します。また、呼吸に戻ります。そんな繰り返しです。

やる前は、『怒り』『嫌悪感』『恥辱感』『罪悪感』が占めていると考えていました。向き合うのは怖いので、身体もこわばって『恐れ』の感情ビンビンでスタートしました。

でもびっくりです。小さい頃に病院に連れて行ってもらったイメージとか、めちゃくちゃ凝った料理を作ってもらったこととか、やりたいことやらせてもらってたこととか考えてる自分がいて、マイナスの感情が出ません…
身体の感覚は、胸らへんが温かくなります。肩と首筋からおでこにかけて力が抜ける感覚があります。
同時に、妻や子どもの顔がイメージとして浮かび(家族みんなが健康でいてほしい… ただそれだけ…)と考えている自分がいました。

そうです。これ、母親が私にかけていた言葉と同じなんです。これが、本当の自分だったんだ…
周りから見ると親が子の心配すんのは当たり前じゃん…って話かもしれませんが、やっと自分の中で腑に落ちました。
手術痕や体型など人からどう見られるか?表面的なことばかり考えていて、大切な『感情』の部分には『思い込み』という蓋をしていました。
(不幸なのは母親のせいっ…てのは、幻想でした…)

的確に感情のラベリングをするなら『愛』ですね。
腹の底まで腑に落ちました。過去に向かって20年も無駄に生きてしまいましたが、ようやく母親と普通に向き合えるようになりました。

そして、私がすべきことは両親や妻や子どもが安心して生活するために、まずは自分が健康的な生活をすることでした。

このように、マインドフルネスをするということは、『思考・身体感覚・イメージ』に引っ付いている『感情』は何なのか?的確にラベリングしていくセルフモニタリングの作業だといえそうです。

DBTには、このラベリングの指標となる『10個の感情』があります。

図4


DBTで学ぶ『10個の感情』とは?

恐れ、怒り、嫌悪感、悲しみ、恥辱感
罪悪感、嫉妬、羨望、愛、幸福感

BPD患者は、過去にトラウマ体験をしているケースが多いです。特に虐待の経験です。例えば、悲しむと怒られる。泣くと殴られる。殴られるなら笑えばいいの?

BPD患者は、当たり前の思考や身体感覚を歪めざるを得ない不認証環境で育った人が多いです。このような状況から逃れられないと情動も壊れるのは必然です。

こんな過去でも無かったことにはできないんです。だからこそ、現実に、今、この瞬間で、何が起こってるのか?  いつかは、逃げずに現実を見て、二極化しないバランスを受け容れる必要があります。
なぜならそれが『感情的な心』でも『合理的な心』でもなく『賢い心』に到達して、『賢く生きること』につながるからです。

『思考・身体感覚・イメージ…』 麻痺ったこれらをマインドフルネスで呼び覚まし、適切な『情動』は何なのか?セルフモニタリングしてラベリングする。
マインドフルネスはキツイです。だからこそ効くのですね。究極のメンタルトレーニングだと思います。

DBTの中核的スキルは『マインドフルネス・スキル』ですが、他にも3つのスキル獲得を目指します。
『情動調節スキル、苦悩耐性スキル、対人関係スキル』です。これらは、また気分が乗ってきたら書きます。

それでは、アディオス・アミーゴ

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