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試し読み:『Procreateで風景を描こう』イントロダクション

2023年12月20日にBNNより刊行される『Procreateで風景を描こう』(3dtotal Publishing編著)より、「本書の使い方」と「イントロダクション」の一部をご紹介します。

本書は、iPad用のペイントソフト「Procreate」を用いて、魅力あふれる風景や雰囲気のある景色を描くための技法書です。ラフなスケッチから完成まで、1つ1つのステップを詳しく解説した10個のチュートリアルを収録しています。

ブラシやブレンドモードなどを駆使し、Procreateの機能を活用することで、効率的な作業が可能になるでしょう。またソフトの機能解説だけではなく、観察による気づきを表現すること、フォーカルポイントを決めることなど、風景画を描くうえで必要な基礎的な考え方も学ぶことができる一冊です。


「本書の使い方」より

この本は、Procreateを使って自然・風景の絵を描いたり、戸外で絵を描いてみたいと思っている人たちにとって理想的な手引書になるでしょう。活き活きとした風景画を描きたい、旅の途中、iPadでスケッチしたい、旅行の特別な思い出を自分のスタイルで形に残したい――そんなふうに思ったことがあるなら、この本を足掛かりに、Procreateで景色を描く旅へと飛び立ちましょう。

「イントロダクション」(p.8)は、あなたの中の絵を描きたい気持ちに火をつけるでしょう。マイク・マケインが風景画を描き続けてきて得た教訓や洞察を教えてくれます。壮大な景色、忙しない都会の街、のどかな庭などの描き方を見れば、すぐにでもiPadを持って外へ繰り出したくなるはずです!

各チュートリアル(p.29)では、10人の画家たちがどのように景色を描き上げるか、1つ1つ順を追って解説していきます。実際の景色を観察して描いたり、写真や想像をもとにしたり、またはこれらを組み合わせたりなど、さまざまなアプローチを紹介します。画家によって、まるで本物の絵の具を使っているかのように最低限の機能だけで描く人もいれば、スライダーを調整したり、ブレンドモードを駆使したり、ブラシの設定にこだわったりしてProcreateの機能をフルに活用する人もいます。引き込まれるような美しい景色を描く方法は無数にあるのです。この本のチュートリアルを参考にして練習を重ねれば、きっとあなただけの方法が見つかるでしょう。

最後のほうに、ダウンロード可能なリソース(p.215)と、よく使われている用語やツールを調べられるように、用語集(p.216)とツール名一覧(p.217)を用意しています。

「イントロダクション」(マイク・マケイン)より

「デスバレー国立公園」(2019年)
自然の中に存在する模様を観察し、絵に落とし込む方法を考えるのが大好きです。
IMAGE © MIKE MCCAIN

単なる日常的な風景を描くにしても、想像上の幻想的な風景を描くにしても、現実に対する鋭い感覚を持っておくのは、見る人を引き込む絵を描くうえでとても役に立ちます。風景画だけでなく何を描くときも同じですが、現実をよく観察し、目に見えるものを描く練習を積み重ねたほうが、画力は大きく向上するのです。

古今東西、画家たちは外へ出て、周りに広がる世界を写し取ろうとしてきました。いわゆる戸外制作と呼ばれるものです。戸外制作では、自然の色や光を観察し、周りの世界に意識を向け、今この瞬間に生きている環境をあらゆる工夫を凝らして切り取るよう促されます。

現代のコンセプトアーティストやイラストレーターたちも、戸外制作に意欲的です。特にProcreateのような、持ち運びに困らないデジタルアプリを活用することの有用性は多くの人が認めるところです。この章ではマイク・マケインが案内人となり、戸外制作の始め方から、Procreateの可能性を広げ、自分の想像上の景色を描き出すところまで、風景画を描く旅へとあなたを誘います。

「ジョシュアツリー国立公園」(2020年)
Procreate のカスタムブラシをいろいろ試してみました。
IMAGE © MIKE MCCAIN

戸外制作の楽しみ方

戸外制作とは、文字通り屋外で、景色を直接観察しながら絵を描くことです。遅くとも1800年代初頭にはすでに、戸外制作が行われていました。戸外制作は芸術への素晴らしい取り組み方で、色と光を繊細に感じ取る練習になりますし、私たちを取り巻く世界の美しさにも浸れます。しかも現代のデジタルツールのおかげで、外で絵を描くのはかつてないほど手軽になりました。

Procreateを使った戸外制作は、私が画家として大きく成長する足掛かりになったので、この本のイントロダクションを執筆できて胸が躍っています。私の今の制作スタイルや好みのブラシ、作業フローのほとんどは、外でProcreateを使って絵を描く中で培われたと言っても過言ではありません。私は2018年に1カ月かけて、アメリカが誇る美しい国立公園をいくつか訪れ、すっかり戸外制作のとりこになりました。それまでも外で描いたことはありましたが、その本当の魅力に気づいたのはこのときが初めてでした。以前は伝統的に紙と絵の具を持っていきましたが、何となく性に合わなかったので、戸外制作自体を敬遠していました。それがiPadのおかげで、全く新しいアートの可能性が目の前に広がり、自然の中で絵を描く楽しさと心地よさに気づけたのです。まるで新しい遊びを見つけたかのように、私はさまざまなアプローチを試し始めました。そして、その結果にさらにわくわくし、もっと外に出て絵を描きたいと思うようになりました。私含め、画家という生き物はときどき無理をしてでも頑張るものですが、一番成長するのはただ楽しくて描いている瞬間だと思います。

この本は、Procreateで景色を描くための素晴らしいアドバイスと洞察にあふれています。この本を読んで、あなたが戸外制作に興味を持ち、実践してくれることを願っています。そしてかつての私がそうだったように、その楽しさに取りつかれましょう!

「セザール・チャベス・ブリッジ」(2023年)
最近、戸外制作で新しいアプローチを試した1枚。
IMAGE © MIKE MCCAIN

自信をつける

屋外で絵を描くのに尻込みしてしまう人もいるでしょうけれど、心配はいりません。私も何年もの間、周りの目がある中で描くのは緊張して仕方ありませんでした。絵に限らず、慣れないことをするときはとてつもなく怖く感じるものですが、練習を重ねるうちに徐々に慣れていきます。まずは人目のない家の中で、窓の外やバーチャルの景色(p.21で詳しく説明します)を描くところから始めてみてはどうでしょう。通行人の目や天候を気にせずに自信を育めます。ただし、あくまで予行演習なので、外で絵を描くのを想定した道具と方法を選びましょう。

手始めにグレースケール*で描いてみるのもいいでしょう。グレースケールなら、色の温度感を考慮せずに、単純にシーンの明暗にだけ集中できるからです。色を使わずとも学べることは多く、色価や構図、外でのブラシの使い方など、さまざまな技術を磨くいい訓練になるはずです。一応言っておきますが、グレースケールで描いたものをレイヤーのブレンドモードを使ってカラー絵にするやり方は、自分の目で見た色を選ぶアプローチとはかけ離れているのでおすすめしません。グレースケールで描いたのちにカラーにしたくなったら、グレースケールの絵をもとに自分の目と手で彩色すればいいのです。

外で描く心の準備ができたら、友達を誘って一緒に戸外制作をやってみましょう! 誰かと一緒のほうが不安になりにくいはずです。通行人に話しかけられても友達がいればあまりプレッシャーを感じずに済みますし、絵を描いたあとに友達と食事やお茶をするのは最高に楽しいでしょう。

*【グレースケール】黒、白、グレーしか使われていない画像。モノクロが白と黒の二階数画像であるのに対して、グレースケールは中間色のグレーが存在することで、濃淡を滑らかに表現することができる。

「我が家」(2020年)
自分の家の中と外で、時間帯による光の変化に着目しましょう。
IMAGE © MIKE MCCAIN

なぜProcreateを使うのか

戸外制作自体は200年も前から行われてきた活動なので、外で絵を描くのにProcreateが必須というわけではありません。ただデジタルで戸外制作をするなら、使い勝手の良さとブラシの種類の豊富さから、私はProcreateが一番好きです。ユーザーインターフェース(UI)がすっきりしていて直感的な操作ができますし、タッチジェスチャーによる操作も多いので作業が速くなります。自動的に作業工程をタイムラプスで記録してくれるので、あとでシェアしたり自分の作業を振り返ったりできるのも好きなポイントです。

Procreateには初めから、さまざまな種類の素晴らしいブラシが用意されていますし、Gumroadを始めとしたウェブサイトで売られているアーティスト作のブラシも含めれば、膨大な数のブラシが手に入ります。水彩や自然な質感のブラシなら、マックス・ウリッチニーが作っているMaxpacks(maxpacks.com)のブラシがおすすめです。模様になっているようなグラフィカルなブラシを求めているなら、私のウェブサイト(mikemccain.art)でスターターセットが無料で入手できます。Adobe Photoshop用のブラシをインポートすることも可能ですが、複雑なブラシはPhotoshopでの挙動と異なる可能性があるので注意が必要です。

最後に、iPadを持っていなくとも(あるいは家に忘れてきても)、Procreate PocketというiPhone版のアプリがあります。指でささっと色を塗って景色を描き留めたいときに想像以上に役に立ちますし、楽しいです。私はときどき、その場のライティングや色を描き留めておき、あとで家に帰ってからiPadやPhotoshopで整えるのに役立てています。

そうは言っても、Procreateを使い始めて間もない人、特にこれまで長いこと別のソフトに慣れ親しんできた人は、Procreateに慣れるための練習が必要です。私もきちんと使いこなせるようになるまで2、3カ月はかかりましたが、かえって自分の絵とじっくり向き合う時間ができて良かったです。新しい手法を練習すると、自分の選択を吟味せざるを得なくなり、いつもならやらない描き方を試したりするものです。とにかく、すぐにでも始めてみましょう。まず基本的な機能を学んだら、いろいろ描いて試してみましょう。わからない機能があったら、公式のProcreate®ハンドブックと、YouTubeのProcreate公式アカウントが非常に参考になるので、覗いてみてください。特にハンドブックのチュートリアルは、作業がはかどるようになるヒントやアドバイスが満載です。Photoshopでできることは、たいていProcreateでもできるのです。

Procreateを使ううちに、戸外制作用に自分で作ったカスタムブラシ。

居心地のいい環境をつくる

私からの一番大切なアドバイスは、まず居心地のいい環境をつくることです。身体的にも感情的にも心地よさを感じているときのほうが、作業に深く集中しやすいからです。私自身、外で絵を描く場所を探すときは、景観の良し悪しだけでなく、心行くまで景色を楽しめるようなリラックスできる場所を探します。壮大な景色が見える場所と静かで居心地のいい場所の2択なら、私は後者を選びます。居心地のいい場所なら、何かしら描きたいと思えるものを見つけられるはずです。

最近は座って描くほうが好きなので、座り心地のいい、折り畳み式のキャンピングチェアを持って出かけるようにしています。立って描くのが好きなら、iPad用の三脚がネットにいろいろと出ています。通行人から声をかけられるのが嫌なら、ヘッドフォンをするのもいいでしょう(それにはわかりやすくヘッドフォンをしていると見て取れるものをおすすめします)。暑い日は飲み物をたくさん持っていくのも忘れずに。寒い日は特に暖かい服装を心がけましょう。最初は暖かく感じても、しばらく外にいるとかなり冷えてくるものです。手を温められるものがあるとさらにいいでしょう。

最後に、出かける前にトイレに行っておくのも大切です。あるいは、出先で近くのトイレの場所を把握しておきましょう。

最近はこのようなスタイルで絵を描いています。


イントロダクションはこのあと、画面を照らす太陽についてや、景色を観察することについて、バーチャル戸外制作について触れられています。そしてイントロダクションに続いては、10人のアーティストによる詳細なチュートリアルを紹介しています。本編は、12月20日発売の本書でお楽しみください。

本書より、チュートリアル目次ページ。


Amazonページはこちら。Kindle版も同時発売になります。



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