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オンライン接客とアナログ接客

最近はビデオを活用したオンライン接客がECや小売業界で注目を集めているようですね。「ビデオ接客はオンラインツールで予約申し込みを受け付け、店舗スタッフが1対1で45分間、画面越しに接客を行うというもの。(中略)接客を希望する客はECサイト上の予約フォームから店舗と日時を指定し、個人情報と当日紹介を希望する商品がある場合には商品名などを記入する(日経新聞6月5日)」。かつてECサイトというのは商品を画像と説明文で紹介し、顧客が欲しいものをカートに入れていくものでしたが、いまやそれは古くなっているようです。このように対人コミュニケーションを含むオンライン接客はアパレルのみならず化粧品や装飾品、高級ブランドなど百貨店ブランドの新しい接客ツールになると思われます。

一方、オンライン接客では別の体験もしました。先日、CRMコンサルタントの友人と食事に行きました。彼は小売企業や飲食店の接客を組織に定着させるプロです。3ヵ月に1回くらいの割合での食事を、かれこれ10年以上続けています。先日のお店はよく行くところだったのですが、いつもの接客がすべてオンラインになっていました。席に着くとテーブルにQRコードがあり、スマホで読み取るとそこにメニューが出てきます。そしてスマホから注文すると数少ないスタッフがテーブルに料理を運んでくれる。しかしこのスマホ上のメニューが見にくい(僕の老眼もある)上に、例えばビール1杯注文するにも幾つかの確認ボタンを押さなければならず、途中で「別の店に行こうか」となりました。事実、払った金額はいつもの半分。その理由は「頼むのが面倒くさいから」という、いやはやオンライン化して効率的になるものが逆に客単価を下げるという結果でした。

友人と話していたのは「接客がオンライン化、デジタル化すればするほど生身の人間によるアナログな接客の価値が増す」ということでした。これまで「当たり前」のように考えていた接客がいかに便利で有難いものだったか。そのため、ついつい飲み過ぎたり、買い過ぎてしまうこともあった。しかしその便利さが突然失われると、今度は不便さが目立ってしまう。仮に支払金額を「顧客満足の点数」と捉えるなら、今回のケースでは半額になったのだから顧客満足も半分だったと言えます。料理やお酒はいつもと同じだったので、失われた価値は接客という当たり前だったものが生み出していたとなります。オンライン接客は便利なようで、これまでの価値を損なうこともあるのでしょうね。