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角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(2)

角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(1)の続きです


睡眠不足か不眠か、はたまた両方か?

角谷 まず、睡眠って、どうやって調べるかって話です。体重ってわかりやすいじゃないですか。体重計に乗ればすぐにわかる。でも、ほとんどの方が自分の睡眠がいいか悪いかなんてほとんどわからないと思うんです。最近ではスマートフォンでも正確に測れると謳っていますが、その元になってる検査は、PSG検査(ポリグラフ検査)っていって、筋電図とったり、脳波や呼吸を測ったりするのを病院で一泊してやるんです。二万円ぐらいするんですけど、この検査をして、はじめて睡眠がいいか、わるいか、どの程度なのかがわかるんですよ。

でも、この検査をしなくても、睡眠の良し悪しがわかる方法がいくつかあります。睡眠の不調には大きく二つあって、「睡眠不足」と「不眠」の軸がある。この二つは別物で、睡眠不足と不眠でそれぞれテストがあるんです。当然、対処も変わってきます。どちらも、っていう人もいます。

それぞれ、国際テストっていうのがあります。病院でも採用している八問のテストで、「眠気尺度」と「不眠尺度」があります。WHOが中心になってつくった世界共通の判定方法です。ちょっとやってみましょうか。

宮木 QRコードと、URLを共有しますね。[編集注:このセッション時間中のみ有効なURLを共有しました。「アテネ不眠尺度」と検索するといろいろ出てきます] 

角谷 レポートは、登録したメールアドレスにPDFで届きます。

宮木 不眠と睡眠不足を分けて考えたことがあまりなかったですね。

角谷 睡眠が足りてないのが睡眠不足で、不眠ってのは、夜なかなか寝れないとか中途覚醒するとか、朝早く起きてしまうとか。寝たくても寝れない。不眠だから睡眠不足になる人ももちろんいますし、どちらかだけの人もいます。

宮木 私は寝つけないことはほとんどないんですけど、寝覚めが悪かったり日中ちょっと眠たいなみたいなことはあります。睡眠不足系ですかね。

角谷 そのくらいだと、だれでもある感じですかね。なにか喋ってても寝ちゃうとか、運転してても寝ちゃうというのは危険ですけど、多少、眠くなるのは人間だからだれでもあるし、食後はバイオリズムで眠くなりますから。

宮木 居眠りは怪しいですか。

角谷 居眠りは相当怪しいですね。会議中に寝てしまう人は睡眠不足の可能性は高いですね。

宮木 睡眠が十分足りてても、自分に興味ない話が続けば眠くなりますし。つまらない会議もそうですけど、高速道路の運転とか眠くなりがちですよね。

角谷 僕も元々交通広告とかやってたんだけど、人が走ってると眠くなる道路のつくりもあるので、もちろん一概には言えないんですけど。

睡眠が足りてなくても眠くないって感じる人もいるし、逆に足りてても眠くなることもあったりしますし。いろんなことが複雑に絡んでくるんで。

宮木 みなさん、そろそろ回答終わりましたかね。

角谷 回答はすぐ送られてきます。
さて、いろんなパターンがあるんですけど、今回、みなさんにはこういったレポートが二枚届いていて、一枚目に六段階での評価が出ています[図2]。

図2

角谷 いちばん下の「超ハイリスク」に◯がついている人は、エプワーステスト(睡眠不足)も、アテネテスト(不眠)も両方とも危険と判定された人です。だいたい二%くらい、もう少し多いかな。

そのひとつ上の「ハイリスク」と判定された人は、睡眠不足か、不眠か、どっちかが危険。二ページ目を見れば、自分がどっちに該当してるかわかります[図3]。

図3

「バッド」は、睡眠不足も不眠も危険じゃないけど、厚生労働省の基準には引っかかっている。ノーマルは一応問題がない。グッドになると、朝目覚めがよかったり、目覚ましがなくても気持ちよく起きられるみたいな、いわゆるいい睡眠ですね。なので、ノーマル以上の方はそんなに気にしなくても大丈夫です。

とくに気をつけてほしいのは、超ハイリスク、ハイリスク、バッドだった人。伸びしろがあるというか、ノーマルに戻るだけでも本来のパフォーマンスが発揮できるので、今日の話を聞いてちょっとやるだけでも上がります。

宮木 チャットのほうで、「やばい! ハイリスクだった」っていう方がいらっしゃるので……

角谷  睡眠不足のテストで危険と判断される人は、だいたい五〜八%くらいなんですよ。要はそんなに多くないです。一方、不眠テストのほうは、三割ぐらいの人が危険に該当してしまいます。軽い不眠症ぐらいな感じです。そして、この人たちの七割ぐらいが、自分では問題ないと思っている。

世界的に言うと、夜あんまり眠れないとか、夜中に何回も起きるっていうことってあんまりふつうじゃないことなんだけど、日本だと三割の人がこれに該当するので、「そんなんふつうやん」みたいな感じですよね。夜もなかなか悩んで寝れないし、夜中に三回起きてうなされるみたいなことがふつう。プレッシャーの強いところにいる方はそんな感じかと思うんですが、三人に一人くらいそういう人がいる。世界的に見ると全然多いですね。

宮木 なるほど。さっきの六段階ではいちばん多いのはどこなんですか?

角谷 日本だとノーマルが四割ぐらいかな。上もそれなりにいるので。ハイリスクまでが三割、四割あるかなぐらいで、バッドが一割、グッド以上が一〜二割みたいな感じですかね。今回のテストは簡易版なので、ほかの企業で使っていたりするものとは若干違うので、おおまかな感じにはなるのですが。

宮木 では、このあとじっくり、不眠、それから睡眠不足に関して対応策についても聞いていこうと思うんですけど、ここで、三〇分が経過しまして、無料でご覧になっている方はここまで、ということになります。

角谷 いまのテストで、危険と出た人は、病院に行く前にぜひ本を読んでください。本に書いてあることを試すだけで、八割ぐらい人がセーフティに入るから。

危険と判定されたら心配になって病院に行く人も出てくると思うんです。そんなに、いわゆる薬を使わない療法って少ないんですよ。まずは、本読んでもらっていろいろ試して、それでもだめなら病院、という順番で考えてもらったらと思います。

宮木 本に具体的な方法が紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。

『働く50代の快眠法則』フォレスト出版 (2023/6/21)

角谷 エプワースの睡眠不足に関して言うと、睡眠時無呼吸で体質的なものがあったりとか、喉や口の形によって、マウスピースしたり、CPAPしなきゃいけないっていう人も一定数いるんだけども、不眠症に関して言うと、ただのリズム障害だったりとか、ちょっとしたきっかけで改善する場合も多いんです。

宮木 ありがとうございます。では、ここまでで無料公開は終了させていただきます。ぜひ、BMIA会員登録してください。

ビジネスパーソンが睡眠を改善すべき三つの理由

角谷 最近、日本でも睡眠改善みたいなことがよく言われるようになりました。僕らのトレーニングも採用されるようになってきて、今年六期目なんですけど、最初のうちは、本当に潰れるんじゃないかと思うくらい、どこも採用されませんでした。

海外では、けっこうな金額でやってたっていう背景があります。ハーバードビジネスレビューとかでも、こういう特集をされてデータもちゃんと出てます。

ビジネスパーソンが睡眠を改善すべき理由、まずは、病気や重大なミスを起こせないから。これはさっきの睡眠時無呼吸エプワースで引っかかった人っていうのは、居眠り運転の率が五倍で、交通事故率は七倍。病気になる確率も増えます。

角谷 僕らも、パイロットとかドライバーの睡眠改善はめちゃめちゃ入りやすくて、睡眠が改善すれば運転も変わります。

宮木 このあたりのわかりやすい疾患とか事故以外にも、業務上のミスみたいなのはたくさん起こりそうですね。

角谷 実はこれ、チェルノブイリとチャレンジャー号なんですけど[図4]、事故原因はいろいろあるんですが、メンバーが睡眠不足状態だったというのが第一原因としてあるんです。睡眠不足になると判断ミスがすごく起こりやすくなるんです。

図4

角谷 とくに、エグゼクティブは判断するのが仕事みたいなもんだから、いい状態で判断してるのか、睡眠不足でなんかよくわかんない状態で判断するのかでは、ビジネスも変わってきますよね。重要な意思決定をする人は、ちゃんと睡眠とりましょう。このあたりは完全に海外が進んでます。

次に、これもいろんな会社で入れてもらう理由っていうにもなってるんだけど、チームの士気に最も影響するから。リーダー研修で最近睡眠を導入するところが増えてます。その理由としては、睡眠が不足してると、相手からは「交流したい」評価が激減して、相手が敵意を持っている」と思い込みやすいという研究結果が出てるんです。仮に、相手は交流したいと思っていても、こちらが「相手は敵意を持っている」と思ったら、チームメンバー間の関係もすごく悪くなるし、営業活動にもマイナスに働きます。

だれのメンタル状態や健康状態が影響するかといえば、やっぱり直属の上司、リーダーなんですよね。リーダーが睡眠不足だとチームのエンゲージメントとか、チームのパフォーマンスが下がる。こういう調査結果もいろんなのが出てて、僕らも各会社で計測するんですけど、やっぱりリーダーの睡眠のコンディションの影響が大きいですね。

それから、メンタルダウンを防ぐため。これは最近多いです。エンゲージメントとか心的安全性を謳っている会社が、リーダーに睡眠をサポートしたいという意向で僕らもお手伝いさせてもらってます。いまいちばん多いのが、この理由です。

角谷 いい睡眠がとれてる人と、不眠の人だと、メンタルダウン(うつ状態)になる確率が四〇倍違う。人は、いきなりメンタルダウンにはならなくて、悩んで、ストレスがあって、よく寝られない。寝られないときに、ネガティブ思考の反芻が起こって、それが連続するとうつ症状になるってのが一般的なパターンなんです。

シリコンバレーみたいなハードなところだと、メンタル疾患持ってる人が半分ぐらいいる、みたいなことが起こったりしてます。僕らも不眠とうつの関係を調べてるんですけど、ほぼほぼ不眠のテストがアウトになってる人は、メンタルテストを受けると、軽いうつ状態になってたりします。睡眠とすごく強い相関性があるんです。だから、不眠に引っかかった人はメンタルテストもやったほうがいいです。

角谷 経営者のなかには、不眠でもメンタルやられてなかったりするんですけど、一気にくるんですよ、どーんと。新しいことやってるからすごく興奮してて、そのときはいいんだけど、どこまで持つかって話ですね。

宮木 無理してると、燃え尽き症候群みたいになったりしますもんね。

角谷 そうなんですよ。ある一時期とか、若いときは無理が利くんですけど、それがどこまでっていうのは個人差があるので一概には言えない。僕らは、リスクの高い人たちを集めていろいろやってるんですけど、リスク者三〇〇名でやって平均を出してます。プログラムを終了すると、平均点が下がる、つまり改善しているんですね。

角谷 とくに不眠ですね、不眠のスコアが下がれば、メンタルスコアも基本下がる。ちょっと時間差があるんですけど、睡眠が良くなれば、よく眠れるようになれば、悩みも減るというのはありますよね。

ビジネスパーソンは、病気や事故とか重大ミスを起こせないし、チームの士気に最も影響するし、メンタルダウンしないように、いい睡眠をとりましょう、ということですね。

あなたの睡眠が周りのみんなを幸せにする

宮木 僕は、感情知能いわゆるEQ(Emotional Intelligence Quotient)の研修をしたり、ある意味専門家として話したりすることがあるんですけども、EQのスコアと睡眠の関係が研究されてるらしくて、睡眠不足だとEQ上がらないんですよ。

EQは、感情をコントロールして、うまく日常生活に役立てる、それから周りの人の感情にも配慮するみたいな、いろんな作用があるんですけども、そういったことは当然チームの雰囲気に大きく影響しますよね。睡眠もそれに関わっているといういまのお話はすごく納得感あります。

角谷 自分のために健康になりたい人ってあんまりいないんですよね、実は。睡眠に関して言うと、自分のためにいい睡眠をとりたい人ってあまりいないんですよ。

たとえば、リーダーが睡眠改善するのは、チームメンバーのためなんですよ。自分が傷ついてもみんなが良くなればいいって思ってるけど、あなたのいまのこの(睡眠不足や不眠)状態が周りを傷つけてるんですよって言われると、そうかもしれんと思って改善に取り組むんですね。

自分が睡眠を良くすると、周りとの関係性が良くなる。そうか、原因はこれだったのかみたいな感じですね。家庭でも、お母さんって、みんなのために寝ずに頑張ってるんだけど、逆にそれで問題が起きているかもしれない。だからお母さんが良い睡眠をとったら家族みんなの幸せになります。保育士さんも、トラックの運転手さんも、自分のために睡眠を良くしたい人っていないんですよね。

「あなたの幸せのためっていうよりも、あなたの睡眠が良くなることで良くなる人が周りにたくさんいる」そう言うと、じゃあやろうか、となる。

宮木 なるほど。自分のためじゃなくて、周りの人のためのほうが、人の行動変容につながるっていうのはなんかすごくわかる気がします。たとえばタバコをやめるきっかけも、結婚して妻が妊娠したから、という方も多いみたいですね。

角谷 実は僕、睡眠やる前に、タバコをやめるお手伝いしてたことがありまして。パチンコ屋さんで、一〇〇人中八二人吸ってた職場で、最後に二人、IQOSになってあと全員やめられたんですよ。

「タバコって、体に悪いですよ」みたいなことを言うと、二割ぐらいに減るんですよ。それは、なんとなく前から良くないなと思っていて、だけどやめるきっかけがなかったような人なんですけど、残りの二割ぐらいの人って絶対やめないんですよ。

いろんなロジックでね「タバコ吸ってても一二〇歳まで生きた人がいる」とか、「このデータはねつ造だ」だのなんだの。都市伝説的なことも含めて、そういうロジックっていくらでも出るんですよ。

だけど、実はタバコのいちばん良くないところって、なにか知ってますか? タバコ一本吸うと、そこから吐き出す息が家族とか周りの人に一〇何時間も影響してるってことです。これからタバコ吸う人の見る目が変わっちゃうかもしれないんですけど。タバコも、その人の問題じゃなくて、その影響を何時間も大切な人に及ぼしてしまう、ということを理解したときに、その人がまともな人だったら、やめますね。自分は気分がいいですよ、タバコ吸ってストレス解消して、だけどそれによって、愛する妻が自分のタバコで害を受けるなんてやだなと思ってやめる。周りの人のためにやめていくんですよね。

(3)に続く


角谷リョウ
Lifree 共同創業者・開発/快眠コーチ

NTT docomo、サイバーエージェント、損保ジャパンなどの大手企業をはじめ、計120社、累計10万人の睡眠改善をサポートしてきた上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会学会員、日本サウナ学会研究員。
ビジネスパーソンを中心にプロアスリートや大学・高校・中学・小学生、またお受験の睡眠サポートも行なっている。
認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1回のセッション+簡易フォローで不眠症レベルの受講者の約70%が「正常範囲」まで改善。4週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」まで改善している。
「人は、強制されても生活行動は変わらない」をモットーに、楽しく自ら自分を変えたくなるようなサポートを追求している。
著書は『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)。

宮木俊明
コニカミノルタ株式会社 ビジネス開発グループリーダー
Growth Works Inc. CEO
Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method anddmaterial
6seconds Certified SEI EQ Assessor & Brain Profiler
親子の休日革命 代表

ミッション:社会に挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らもイノベーションに挑戦し続ける

大学卒業後、葬儀会社勤務、音楽活動を経て、商社の法人営業として2011年から3年連続トップ営業を達成しつつ、社内業務変革(今で言うDX)でも成果を挙げた。
2014年に創薬研究支援スタートアップとしてディスカヴァリソース株式会社を設立し、代表取締役に就任。大手製薬企業に採用された国内初の研究支援サービスは現在も活用されている。
2019年に教育ITベンチャーにジョインし、No.2として法人事業部門を統括するとともに、自らコンサルタント・講師として、全国の人と組織と事業の成長支援に奔走。
2021年からはコニカミノルタ株式会社のビジネス開発グループリーダーに就任。新規事業開発・人材開発・組織開発の「三位一体開発」による既存事業部発のイノベーションとして、印刷業界全体のDXに挑戦中。
BMIAには2015年から所属し、ビジネスモデル・キャンバスやバリュープロポジション・キャンバスを活用した新規事業開発コンサルタントとして活動開始。
2016年に経済産業省が主催するグローバルイノベーター育成プログラム「始動2016」に採択。イノベーターとしてのスキルセットとマインドセットを磨き、最終選考を経てイスラエル派遣メンバーに選出された。
2017年よりライフワークとして誰一人として親子の時間を犠牲にせず親子の学びと成長を支援するワークショップ・プログラム「親子の休日革命」を推進中。
2019年、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏のソーシャルビジネス・デザイン・コンテスト「YYコンテスト2019」のグランドチャンピオン大会に出場し優勝。日本代表として世界大会への出場決定 (新型コロナの影響で延期中)
2020年にソーシャル・ビジネス・カンパニーGrowth Worksを創業。イノベーションを志向した教育・新規事業開発・人材開発・組織開発の講師・コンサルタント・ファシリテーターとして、研修やワークショップの提供を通じて人・組織・事業・地域社会の成長を支援中。
著書:
『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』
『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』




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