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SHEINの驚異的なビジネスモデル

時価総額が1,000億ドルを超え、「ZARA」「H&M」をあわせた時価総額を超えてしまったことで注目を集めたアパレルEコマースの「SHEIN」は、そのビジネスモデルに特徴がある。今回はSHEINのビジネスモデルをキャンバスに描いてみよう。

ブラックフライデーでは、99%オフの文字が
製品の多くが2000円〜3000円の価格帯

毎日3,000〜5,000種類の新作をアップ

ITエンジニアであったクリス・シューによって設立されたSHEINは、徹底的な低価格、多品種少量生産により、毎日、気軽に買い物ができると、多くのZ世代、ミレニアル世代に支持された。

新製品開発の量とスピードはすさまじく、毎日3,000~5,000種類もの新製品をアップし続けている。ZARAなどのファストファッションも、トレンドをいち早く掴んで製品化することで有名であるが、それを圧倒的に凌駕している。

これを可能とするのが、広州の衣料品市場におけるサプライチェーンである。SHEIN自体はデザイン、製造は行わず、市場から調達を行っているため、こうしたビジネスモデルが可能となる。

ファストファッションブランドは、製造から販売までを垂直統合することで、顧客ニーズを製造計画や製品開発へと迅速に反映していくことを強みとした。SHEINはそれをさらに先鋭化させ、いわばデジタル世代のスピード感でもって、リアルなアパレルを高速回転させているのである。

しかし一般的には、こうした多品種少量生産はコスト高になる。ファストファッションが垂直統合による大量生産を行うのは、コスト低減のためである。どうして低価格で、しかもオンラインでの販売が可能になるのか。低賃金での労働問題など、人権問題も指摘されている。

SNSマーケティングの活用

インフルエンサーを通じたSNSマーケティングを集中的に行い、若者への広いリーチを獲得したことも、SHEINの特徴であった。

もともと口コミ重視の中国においては、マスメディアよりもこうした草の根のアプローチが有効であったが、SHEINはさらに、有名インフルエンサーであるKOL(Key Opinion Leader)にかわり、より身近なKOC(Key Opinion Consumer)を使ったことで注目を集めた。

KOLの場合、影響力は強いものの、コストも高く、また広告色が強く出過ぎることにより、マスメディア同様、信頼性が失われてしまう危険性もあった。そこでフォロワー数は少ないものの、しっかりと商品を使ってレビューもしてくれる、さらにはフォロワーとも双方向のコミュニケーションを深められるKOCを活用するようになったのだ。

KOCの台頭、KOLとの違いと中国マーケティングにおける役割とは
https://x-c.co.jp/blog/whatiskoc-2/

そうした草の根のマーケティングはさらに、こまかなニーズを汲み取るのにも適していた。色やデザイン、素材などさまざまなA/Bテストを行い、よりニーズにあう商品をリアルタイムに把握することが可能になったのである。

こうして生まれたのが、ファストファッションを超えたリアルタイムファッションなのである。

SHEINのビジネスモデル


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小山龍介

一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、米国MBAを取得。松竹株式会社にて歌舞伎をテーマにした新規事業立ち上げに従事。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。メンバーの自発性を引き出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介したビジネスモデル・キャンバスは、多くの企業で新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。

2015年より名古屋商科大学ビジネススクール准教授。2014年には一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会を立ち上げ、2020年からは亀岡市で芸術を使った地域活性化に取り組む一般社団法人きりぶえの立ち上げにも携わるなど、アートとビジネスの境界領域での実践を進めている。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。著書20冊、累計50万部を超える。

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