これが、かぞく / 02
姉から連絡が入った。それが生理前の私を泣かせている。
「母、父ともう一緒にいれないかもって」
私は「ああ、また。私がみていなかったからだ」と思った。
私が近くで見ていれば、そうなる前に止められたのに。
私が家を出なければ、家族ずっと一緒にいられたのに。
私が結婚しなければ、母はまた悲しまなくて済んだのに。
父は今部屋を探しているそう。そんなに本格的なところまで話が進んでいるのか、と絶望を感じながら、このままでは後悔すると思い、父に話をしにいく。そう決めたこの夜である。
両親離婚経験者の夫に話をしたら、目から鱗な回答があった。
「俺は昔からおかんがおとんのことで腹立ったりしているの見てたし、子供の俺から見てもおとんはひどい人やったから、離婚するって聞いた時はよかったやんって思ったけど、さんちゃんはそうは思わないの?」そんな風に考えたこともなかったし、そう自分に問いかけたら、私は母に対して酷いことをしてきたのだろうか、とも思えた。
「さんちゃんは、父に対して甘いよ」とも言われた。
図星だったのか、「そうかも」としか思えなかった。
大人になって、一緒に住んでないのに、離婚してほしくない思いって?
それはきっと、ずっとずっと、自分自身にも隠してきたけど、家族への憧れだとすぐわかった。
家族への憧れがあったから、結婚願望が強かったんだと思う。はやく私はこの「家族からの愛」から逃げ出したかったんだと思う。
そして逃げ出したいのは、幼い頃の自分を助けたいだけの、エゴかもしれないとさえ、思った。
ここで離婚を止めないこと、母にとっての幸せ?
父は、本当にさみしい人なのだ。周りに理解されない、でも自分で気持ちを伝えるのも下手な、不器用でさみしい人。そんな父が一人になってしまった未来、父が幸せな未来を想像できなかった。
最近の話を母の口から聞いた。私は涙が堪えきれなかった。すると母は「やっぱり離婚してほしくないんや」と、半分笑って、半分悲しそうな、そんな表情をしていた。
姉に、少し家族と距離を置いたら?と言われた。近くて、考えすぎて、つらそうだよと。
でも距離を置いたからこうなったんじゃないか、その方が、今の状況の方が、よっぽどつらい。
私の人生観にまで影響が出している、私の家族の在り方。
たったひとつの人生の集まりで、私の大切でたったひとつの家族。
ふつうの家庭なんてないのかもしれない。それでも、やっぱり普通の家庭に憧れがあり、それは変わらないだろう。なりたい、目指そうと思ったものが、みる角度を変えない限り、変わらない存在であるのと同じで、とても単純なこと。
私、いつまで子供なのかな。でもやっぱり、父母にはずっと一緒にいてほしいよ。今もなお、離婚してほしくないよ。結婚していた期間の方が短くても、つよく、つよく、毎日そう思ってしまう。
姉からのあの話が嘘だったらいいのに、母のあの表情が夢だったらいいのに、そんな風に思いながら迎える朝が、もうなければいいのに。
父に話に行く日はまだ決まっていない。
どんな風に話そう、なんて伝えよう、どこまで話そう、そんな不安が毎日毎日思考のほとんどを占める。
そしてその日が終わったら、私も家族にこだわるのをやめなければ。父には父の、母に母の、人としての時間がある。私も私の人生がある。
そうなる日が来ませんようにと願いながら、今日もこのふかふかの布団に感謝しながら、朝を迎えるのだ。
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