マイゲイライフ
銭湯の大きな鏡に映る
自分の身体を見てみる
胸はそんなに厚くないし
腹はぽっこりと出ているし
パンツのゴムにゆるく乗る腰の肉
尻もそんなにいい形ではない
のんびりと風呂やサウナで見る身体に
ときどき羨ましくなりつつ
自分の身体を客観的に見てみれば
もう少し削がないといけないのかななんて思うけど
いわゆるボディシェイミングを見てしまうと
あんなふうになりたくはないと自らを戒める
どこにもお呼びではない夜
飲みに行くこともなくなり
夜にはもう踊れなくなった
パートナーとは休みと時間が合わず
互いに干渉しないとは言っているけれど
生きているこの世界が少しずつ怖くなってしまった
SNSで顔を見せずに
セックスを晒すような人間ではないし
ジムに行っていなければ
どんな誘いも爪弾きされる
ほぼ閲覧用になったゲイアプリは
課金を求められて2つ削除した
差別発言に抗議したり
制度の制定を求めたり改定や撤回を言ったりすれば
今はウザったいと思われる世の中にいて
それでも変わらない現実を憂えば
あいつとは絡みたくないなと言われる
中立の立場になんて決してなりたくないのに
そもそもともだちと呼べる人もいないし
話の合う人はいてもそれっきりだし
ぼっちでも遊べるし
きっちりよりだらしなくしていたいし
だけどいつからかそんなことさえも
許されない風潮になったんだろうな
そして誰かといっしょでなければ
いつまでも仲間外れなのかな
ずっと遠くから見ていた
世界なんて理想のひとつもなく
現実はあまりにも残酷で
結局顔と身体とスマホしか見ていない
目に映る狭い世界を羨ましがっていたのかと
あまりの情けなさに顔が曇った
なのにどうして見てしまうんだろう
もうそんなものにはなれないのに
条件がたくさんつけられて
息苦しくなってしまった
今までしがみついていたけれど
考えたらどうしてそうしていたんだろう
ウェブドラマにもポッドキャストにもついていけないのに
いったい何を求めているんだろう
振り返れば費やした時間と金額の多さに
果てしない恥ずかしさと後悔が押し寄せてくる
今さら身体を鍛えても
そして肌の色を多く見せても
何をやっているんだろうとしか思われないだろうし
キラキラにもギラギラにも程遠く
白く濁った欲を吐き出す場所も限られてしまったから
ふつうなんてもうないんだなって思うよ
昔を思えばちゃんとしていたかったと思うけれど
自分ももてはやされたかったという気持ちが
わずかでもあったんだな
そして今がこのような時代になってしまったことに
絶望と失望を覚えているけれど
別に波に乗ろうとは思わなかった
生まれ持ったものを恨むわけではないが
もう少しかっこよく頭脳も明晰で運動神経も良かったらなんて
それはもう贅沢な話かな
今の子は昔より恵まれているよなと
ちょっと笑ってしまうけれど
願っていた頃にはもう戻れない
どこまで変われるかなんて
その先のことを知らないまま
目まぐるしく変わっていく世界は
何処に居ても自分を置いていく
鏡を見ても変わりはしない
自分の顔も身体も魂も
この夜のどこかで
飲んで踊りキラキラしているのかな
あるいは暗闇かベッドの上で
ギラギラと滾っているのかな
そんな光景を想像するたび
無縁になってしまった自分を憂う
自分の生きがいって
いったい何になるのだろう
このまま老いていく自分に
未来があるとも思えずに
最後がどんなふうになるのか
想像さえつかないけれど
誰にも囲まれることなく
ひとりで眠るように居なくなるのがいい
そう思う年齢になって
これからどのくらい生きるのか
これから何が起きるのか
これから誰に出逢うのか
分からないものへの期待は
わずかでもしたほうがいいのだろうか
別にもうキラキラしていなくても
ギラギラしていなくても
もういいはずなんだけど
それさえも許してもらえない気がする
世界はまだまだ変わるし社会も変わるかもしれない
ただ悲しい轍は踏みたくない
今度うまいこと生まれ変わっても
ゲイであるかもしれないけれど
悲しみを抱えることもなく
生きやすくなった社会になって
誰もが尊重されていく
そんな世界であるように
それでも
自分が変われることがいちばんいいのだろう
しかしそう思うようにはならないから
せめて自分は生きやすくなりたいと
心から願っている
そうなれば何が起きても
笑えるようになるかもしれない
これからは
思い描いたものとは違っても
自分が自分で居られたらそれでいい
まとわりつくものは捨てて
背伸びすることも止めて
流れていく時間を大事に
穏やかに一日を生き切るだけだ
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