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測定は対象を乱す


-「測定というものはですね、対象を乱します。」

これは、私が大学生のとき授業中に教授から聞いた言葉で、今も強く心に残っている言葉です。

その授業は電気回路とか電磁気学だったかと思うのですが、「例えば電流を調べるには測定器に電流を通す必要がありますが、測定器の設置によって元々の回路の状態が乱されてしまい、結果として本来の電流を正しく測定することはできない」という話でした。

世の中の例

接触式の温度計:体温計であれば脇に挟んだりして測定しますが、センサー自体が温度を奪って体温を下げてしまい、本来の体温が分からなくなります。もっとも、体温計での誤差は0.1℃未満となり支障は無いでしょう。

胃カメラや血液検査:健康を保つために実施する行為ですが、この行為そのものが身体に負担をかけてしまいます。電流の例とは意味合いが少し違いますが、対象を乱すという点では同じと言えるでしょう。
 工業製品の破壊検査なんかも同様で、調べるためにモノを破壊してしまいます。(≒破壊していない別個体の真の実力は、不明とも言える)

消費者アンケート:私も仕事柄たまに取り扱いますが、これも要注意です。人間というものはどうしても心理的に自分を良く見せたいと思ったり、アンケートの並び順で回答が左右されてしまったりします。
 例えば、「1日3回歯を磨きますか?」「使い終わった水筒は、毎回しっかり洗っていますか?」といった設問の場合、「はい」と回答する割合が実際の行動より上振れする恐れがあります。

二重スリット実験:私は専門外なので深く説明できませんが、観測者(観測器)の有無で結果が変わってしまうことで有名な実験です。実際のところは、観測そのものが粒子のふるまいに影響を及ぼし、結果に影響してしまっているようです。
(参考:https://jp.quora.com/2%E9%87%8D%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E5%AE%9F%E9%A8%93%E3%81%A7%E8%A6%B3%E6%B8%AC%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%8C%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AF%E3%81%AA

正しく知ることは難しい、かと言って

以上のように、観測してしまうと対象を乱し、乱される前の真の情報を得ることが難しいという事例はちょくちょく目にします。
(光学センサーによる測定や体重計など、乱されないケースも多々あります)

しかし、「正確に測れないから」という理由でそもそもの観測自体を否定することは間違いだと思います。観測によるズレや誤差がどのような内容で、またそれはどれ位の大きさなのかを把握し、データを取り扱うことが大切だと考えます。

新商品開発に市場調査は必要か

「測定は対象を乱す」という言葉を思い出すたび、派生して「新商品の開発に市場調査は必要なのか」ということをよく考えます。

私の答えはイエスであり、ノーです。

ノーである理由は主に2つです。
①例に挙げたように、消費者アンケートの回答は人間心理から誤差が大きく出る恐れがあり、出てきたデータを鵜呑みにするのは危険であるため。
本当に消費者が欲しいものは消費者自身も理解しておらずほぼ回答に現れてこないと考えるため。

 ②はスティーブ・ジョブズの考え方に影響を受けています。ガラケーがシェア100%の時代に欲しい携帯端末アンケートをしても、出てくる回答は「ガラケーの延長線上にある何か」で埋め尽くされたでしょう。2024年現在であれば「バッテリー等の性能が進化したスマホ、もしくは分からない」がほとんどになると思います。

イエスである理由は、最後の後押しとしてアンケートの意見が必要になる時が来ると考えるからです。
今私が考える商品考案の順としては、以下となります。

  1. 人の真の欲望、叶えたいことを0ベースで考える

  2. アンケートは並行して実施する

  3. 1.を達成できる商品を想像/創造する、技術が足りなければ補う

  4. 商品コンセプトが仕上がったとき、これが2.の人たちも満足させられるかチェックする

  5. 4.も問題なければ、コンセプトを形にする

私は1.と3.をひたすらに追及することが、よりよい商品開発に繋がると考えています。

おわりに

脱線しましたが、測定は対象を乱すという話でした。
人の考え・心も簡単に乱さず簡単に観測できればいいのに、、と思いました笑


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