蔓から滴る甘い空気も

 朝、駅を降りたら嫌なものを見た。通勤路にある素敵な家の壁に、白いステッカーが貼られていた。
 好きな家、秋に虫が鳴いた春に花が咲いた。その家の取り壊しが決定したのだ。苛立ちと憂鬱。この国は技術力何だかんだ言っていても、建築物構造物は30年単位の使い捨てに近い。どれだけ景観と緑化に寄与した屋敷でも、今では不動産屋に買い上げられたら最期、敷地の縁まで家屋で飽和したコンクリートになる。ここも詰まらないマンションになるのか。
 茉莉花が匂った五月、虫の声が降り注いだ九月。雨の日は土のにおい晴れた日は草のかおり。忘れない忘れない。

今日の英語:Disposal

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