まっすぐな路地には足音だけ

 夜、冬の空気の中を歩く。冷えた空気は硬く、透明度が高い。街灯の光りまでも奥まで広がっている。
 その夜道でマスクを外す。肺に刺さるように冷たいが、舌には甘い。こんな甘い空気を呼吸していたのかと毎回思う。隔てられてようやくその美を知った。
 もういっそ、このまま人間は少なくなっていくべきなのではないだろうか。水も土も汚し過ぎている。
 冬のように世界が人間から遠ざかっていけばいい。
 空気は甘く、そして痛かった。


今日の英語:Pale

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