愛と健康と食物繊維

 母の地味な変人ぶりはその料理にも現れている。
 母はしょっちゅう謎の料理を作る。母の名誉のために言っておくが、それが不味いということは決してない。ただ再現も分類も困難なのだ。
 母はよく新聞やTV番組で紹介されたレシピを元に料理を作る。しかし基本的に母は調味料を匙で計るということをしない。そして材料を買い揃えたりせず既にあるもので代用する。たとえばオリーブオイルの代わりにゴマ油を使ったり、ツナ缶の代わりにサバ缶であったり。結果的にそれは美味しい料理にはなるのだが、元の料理とはかけ離れてしまっている。さらに「健康にいいから」という理由でネギ・シソ・ショウガなどの薬味を無慈悲なまでに盛り付ける。
 つまり目分量・その時手元にあるもので作っているので再現できない。また同じものを作ろうとしても「美味しいけど別物」になってしまう。そして和食でも洋食でも中華でもない、健康的な謎の料理となるのだ。
 料理が上手でも下手でもなく、再現不可能な名状し難い作品を作る。地味な変人、極まれり。


今日の英語:Cooking

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