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凡慮、河川に釣行す #2

 今回はまた川での釣りに挑戦する。折しも自転車が6ヶ月目の無料メンテナンスが受けることができるということで、自転車を購入したスーパーに預けて、その間にスーパーの裏手の河川敷で釣りをする計画だ。
 事前に釣り情報サイトで調べたところではちょうどこのスーパー裏手は釣れるポイントとして紹介されているのだが、土手が切り立っている上に藪が生い茂っているため水面まで降りていけない。水面に近付ける場所もあるにはあるが、私のような入門者の釣竿ではとても勝負にならない地形ばかり。

 橋の上から眺めたところ、こちら岸は泥が露出しているが小物が隠れていそうなポイントがない。あちら岸はまだ初心者にも可能性ありそうな地形が見えるため、今回は文字通り河岸を変えることにした。

 件を繋ぐ長い橋、コンクリートが足裏に硬い。延々と続くような橋を歩いているうちに腕時計を忘れたことに気付く。せっかくの腕時計、せっかくのタイドグラフ。
 橋を渡り岸に近付くと、橋の下が格好のポイントであることが分かった。しかもシーズン前の平日とあってか工事車両以外にまったく人が居ない。ならば大丈夫だろうと荷物を土手の上に置いて準備を開始する。

 前回川釣りで使用した竿と仕掛けで挑戦開始。歩いている間はそう感じなかったのだが、川面近くでは風が強く吹くらしい、仕掛けが上流に流されていく。逆らわず流されるままにしながら軽食をとる。先程のスーパーで購入したコーヒーと高菜入り惣菜パン。何故か釣りを始めると小腹が空いてくるのだ。しかしパンを噛っている間に竿に結んだはずの仕掛けが全て消えていた。リリアンへの結びが甘かったか。一投目でこれとは、パンはもう少し我慢すべきだったか。ストックの仕掛けを結び直し再度トライする。

 今回のエサも疑似糸ミミズとミルワーム、それをふやけるまで投入し交互につけ直す。しかし釣れない。私の爪先の水中にはメダカかウグイか、小魚の群れが泳いでいるのが見えるのだが。
 あまりに手応えもなく人もいないので、マスクをはずしてぼんやりとする。
 空の青と水の色、確かに釣りは考え事をするにはいい口実なのかもしれない。
 途中、橋の下に設置されていたトイレへいく。ソーシャルディスタンスを啓発する標識があるので公共のトイレなのだろうが、この時代にあって汲み取り式だ。工事車両が出入りする傍らに設置されているので工事関係者の専用状態なのかもしれない。しかし膀胱が小さい系女子としては四の五の言ってはいられない。ありがたく使わせていただく。

 素顔で呼吸する空気は水のにおいが濃い。ぼんやりをしながら釣りをする。ゴミを拾ったりぼんやりしたり。周囲にあったゴミの小袋のなかからミミズを発見する。ミルワームより格上のエサを拾えて幸運なのだが、エサ用とはいえ生体をそのまま捨てていった者への怒りは禁じ得ない。
 釣り針にミミズを付け替え釣りを続行。しか釣れない、またぼんやりをする。
 相変わらず頭上の橋からは車の音。背後を工事車両が通る度に猛烈な埃が吹き抜ける。
 ぼんやりしているうちに水位が上がってきた。最初立っていた場所は今では水面の下。水位はその立っていた場所から30cmは昇ってきている。不便を感じるほどではないが、しかし釣りをするまでここが汽水域だとは全く知らなかった。
 水面、汽水域にはえる葦、風。

 水位も上がり適当に時間も過ぎ、余ったミミズをどうしようか思案する。飼育できるものなのかその場でスマートフォンで検索し、思い余ってコンポストを注文する。
 今回の釣りは13時に開始し15時30分終了とする。恒例のゴミ拾いをするのだが、無限に拾えるのはどういうことだ。今回私もビニール袋を一枚飛ばしてしまったが、うっかり落としたとは思えない空き缶やあきらかに地面に捩じ込まれたタバコの吸い殻、果ては炭とホンビノスガイの貝殻まで放置されている。たとえこれらの持ち主の趣味が釣りであったとしても絶対友人にはなれない。ゴミで限界まで膨らんだビニール袋を橋脚下の公式ごみ捨て場に捨てていく。こんな近くに捨てる場所はあるのに。

 スーパーに戻るとちょうど16時。メンテナンスに出していた自転車を引き取ってファミレスへ向かう。
 今日も何も釣れなかったが、書くべきことが溢れている。


今日の英語:Dump truck

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