ネコーヒー:ストレート #12杯目

 テトとマユを我が家に迎えてから約1年。ふたりとも元は保護猫のため野良生活をしていたと思われる、のだが、今や当然に人間を召し使う。特に給仕には厳しく、ご飯担当である私が仕事から帰宅するのを毎日階段の上で待ち構えている。

 私が腰を下ろすのを許さずご飯ダンス&ご飯ソングで給仕するよう追いたてる。容赦がない。先代の猫たちはフードの入った袋を床に置いておくと勝手に自分達で食べていたものだが、テトとマユはそのようなマナー違反はせずどこまでも人間に給仕させる。
 そんなテトとマユの平日の食事は1日3回。朝食と夕食とディナー。私が寝る前に煮干しのトッピングされた“ちょっといい”食事を要求する。それが給仕されるまでやはりダンス&ソングでご飯担当を追いたてるのだ。容赦がない。そして担当者が休日で1日家に居る時は、それに更に午前10時のおやつと午後3時のおやつが追加される。
 あまり甘やかすのはよろしくない、とは思う。しかし無視しているとテトの最終必殺技『うったえる眼差し』を浴びせられる。これをされては意思も正気も保てない。

 我が家に来た時はあんなに尖った眼をしていたのに……と至高の液状おやつを給仕する。そうして背後でマユが「計算通り」と笑うのだ。

 猫の、猫による、猫のための容赦のない要求。苛烈な下僕労働は今日も続く。


今日の英語:No mercy

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