改良の結集

 安易に選んで、使って知る価格の真価。
 職場で不要になった鑷子を貰った。20cm程のピンセット。噛み合わせが悪く、修理費用が新規購入より高額になるため廃棄となった。噛み合わせが悪いといっても、閉じたときに2mm幅の先端部分が約1.2mmずれてしまう程度。全く噛み合わない訳ではないが、糸やガーゼを摘まむ道具としては仕事にならない。
 廃棄にするその鑷子を貰って帰ったのは、爬虫類の餌として育てているミルワームを摘まむためだ。ミルワームを素手で触ること自体に抵抗は無いのだが、小豆粒ほどの虫を掴むにはやはり先細の道具でなければ不便だ。割り箸や100円のピンセットを使ってきたのだがどうにもしっくりこない。そこで棄てるのならと鑷子を貰い受けて使ってみたのだが、感動。
 あまりの使いやすさに衝撃を受けた。100円の10倍以上するのだから当然は当然なのだが、それにしてもこんなに軽やかに使えるものなのかと。
 実は苔の手入れ用に買った20cmのピンセットはあるのだが、そちらは固くて重くて使い勝手が悪く、お茶を挽いている状態だった。しかしリタイア後であるにも関わらず「プロの現場用の道具」がここまで使いやすいとは。たかだか金属の棒2本を接着しただけの道具でここまで違いが出るとは驚きだ。シンプルな道具だからこそ、ツールとしての切磋琢磨がダイレクトに現れるのだろう。
 試行錯誤の地層から顕れた道具という結晶。それを手にして喜びと感謝を。

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