そのメビウスの廻りの中に立って

 きっぱりと冬が来た、と言ったのは誰だったか。今年は今日から夏になった。どぉん、と音がするほどの圧倒的な夏だ。日付と共にギヤが切り替わったのか、容赦の無い高熱の夏になった。
 私が小学校で<へちま>や<あさがお>の観察日記をつけいていた頃ーー四半世紀は昔だ、は気温が30℃を超える日が珍しかった。ミニマムな私鉄はクーラー無しの車両がデフォルト。それでも正体のよくわからない光化学スモッグが頻発し、日射病が熱射病となった。当時読んだ児童小説の中の「今年もまた異常気象でまた暑くなるようだ」という一文に、その小説のリアルさを感じた記憶がある。
 今の私にとっては夏は30℃以上が当たり前になってしまっている。甥っ子や姪っ子には『これがフツーの夏』だろう。あの夏の青臭く瑞々しい涼しさはもう共有できないのかもしれない。
 それでも四季は廻る、干からびた呼吸をしながら。このままうまく人間が衰退すれば、あの美しい風は戻ってくるだろう。

今日の英語:Intense heat

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