必要だが不急の葛藤

 撹拌され、まだ沈澱しきらない街の混乱。手を伸ばそうか一歩をためらう。
 小売りの店頭の混乱も落ち着きを取り戻し、空のままの棚も少なくなった。以前ほどの品揃えの迫力は無いが、一般的な生活必需品は揃うようになった。医療関係を除けばもう焦らなくても良い状態ではある。経営がかかっている人達はそうも言っていられないのだろうが、いち消費者としてはこのままでも問題ないとは思う。新商品で消費を焦らせられるのは疲れてしまう。
 COVID-19の感染力の高さが認知された頃、キッチンペーパーが店頭から消失した。現在では相変わらず個数制限はあるものの店頭に並ぶようになってきた。私はキッチンペーパーでマスクは作っていないが、爬虫類のケージの中敷きに仕様している。もうそろそろ補充したいのだがその勇気が無い。これはいざとなれば新聞紙等で代用も可能だし、そもそもニンゲンの生活に必須でもないからだ。
 それを買いたいが必需ではない、そんな理由でもうひとつ買えないでいるものがある。新生児用の拭き取りシート、いわゆる「赤ちゃんのおしりふき」だ。これらのシートはある程度の面積があり、何より無香料でノンアルコール。なので爬虫類や猫のケージを清掃したり直接体を拭くのに最適なのだ。だが本来は新生児用、今は気軽に買って良い状況ではない。
 溢れかえるほどの潤沢は必要ない。ただあと一歩の安定があればなどと勝手なことを願ってしまう。
 まだあと少し。まだ手段は残っているから、信頼して回復を待とう。

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