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錆かけペダルを奮い起たせ #2

 河口の“ほこら”を出発し、埋め立て地沖合の空港を目指す。
 建築物は遠くにあるか建築途中のものばかり。道路は車ばかりで人の気配はさらに減る。それでも少し走れば自転車乗りとすれ違う。以前ここを走った時はこんな頻度ですれ違いはしなかったのだが、やはりこの遠出できない状況がヒトをここに集めているのだろうか。

 道は整備されているが、橋や一部の道は未だ完成途上である。広い道路も車を前提に作られているので、ときに歩行者や原動機の付いていない自転車は驚くほど状態の悪い道を進まねばならないこともしばしばだ。割れたアスファルトからは伸び放題の夏草。それでも道は空港まで途切れることなく続いている。

 私は自然や廃墟や「人影の無い風景」が好きだ。文明の果てのような世界。だから建築途中の建物を見ても「このまま終わりにすればいいのに」と思ってしまう。完成してしまえは役割を持ったものとして完結してしまうからだ。風化していくコンクリート、これまでの時間これからの時間。これ以上巨大建築物を増やしてもどうせ大して繁栄しないのだから。

 出かける時にあらかじめ凍らせたペットボトルのお茶を2本カバンに入れてきた。意外なぐらい喉は乾かなかったのだが、それでも意識的にお茶は飲むようにした。喉は乾かなくても汗は猛烈にかく。うなじを汗が落ちていくのが分かる。今日一日でこの二ヵ月分と同じ量の汗をかいたのではないだろうか。ハンカチではなく手ぬぐいを持ってきて正解だ。

 途中一回道に迷いかける。前回も三択の選択肢をそれぞれ間違えて行ったり来たりしたせいで、どれが正解だったかストレートに結びつかない。それでもスマートフォンの地図と消去法の選択で目当ての空港まで辿り着く。車で往来するのが前提の施設なので、自転車に乗っているのは私ぐらいなので相当目立つ。しかしそれよりも座って休みたい気持ちが勝る。駐輪場などという親切な設備は無いので、植え込みの陰に自転車を停めて涼しいターミナルに入った。

今日の英語:Architecture

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