まだ春の装いは遠い

いつかそれも角が磨り減って丸い石になる。
私は出勤の電車内でデジタルメディアプレーヤーで音楽を聴いている。別にそれは「好きな音楽を聴いて気分をアゲる」とかではなく、どちらかというと耳栓代わりだ。他人と密着している中でのイライラした沈黙が辛くてたまらない。せめて好きな音楽を脳内に流すことで圧迫感を中和している。おそらく私はパーソナルスペースの半径が硬いのだろう。
しかしここ数日はメディアプレーヤーを着けていない。朝の電車が空いているので、自然と忘れてしまうのだ。
一駅毎に蠢いて乗り降りが繰り返される電車内で、
いかに揉まれないポジションを確保するかが 勝負だった。なのに今日は座る席を選ぶことができるくらいにスペースが空いている。朝の8時なのに、まるで日曜日の14時30分かのような有り様だ。
あれだけいた人達は、どこに居るのか行ったのか。
単純にポジティブに捉えれば、しばらくは耳栓の必要の無い通勤時間を過ごせる。しかしながら寒い。換気のため全ての窓が開け放たれているため、風が遮るものなく吹き込んでくる。元から私は暖かさより換気を優先する人間だが、にしても限度が過ぎている。電車に乗るたびに体が冷えきってしまう。
だがこれもいつしか当たり前になって、来年には当然に対策がとられるようになるのだろう。

今日の英語:Train


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