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産休・育休中の学び直し

賃上げ対策の一環としてのリスキリングについて物議を醸しているのを目にした。総理は育児中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む人をしっかりと後押ししていくという旨の発言をしたらしい。

以下、現在未就学児1名を育児のため専業で主婦している身での考察。
(ちなみに前提として自身が出産するまで未就学児の世話などした経験無し)



出産するまで


産休に入るまで(というかお腹が大きくなってくるまで)は、自由時間があるなら勉強に使いたいとぼんやり思っていた。しかしいざお腹が大きくなってくると普通に生活するだけ、がとてつもなくしんどい。(仰向けで寝る派なのに)横向いてしか寝られず、内臓は常圧迫され、靴下を履くのもとてもとても大変。加えてトイレが近いし、胎動が始まってからは胎動があるかどうかがものすごく気になるし、夜中変な時間に目が覚める(というか寝られん)。とても机に向かって集中して勉強など出来る気がしなかったし、実際にしなかった。出来なかった。

出産してから


乳児はこちらの意図しないタイミングでいろいろな要求をしてくるわけで、言葉を話さない、会話ができない相手を見張る(注意深く見守る)ことでしか異変に気付いたり、状況把握するのが難しいため自分事に使う時間など限りなく「無い」。というか、まとまった睡眠時間が取れないので判断能力などが正常に機能しているとは言い難いし、集中力もそう続くものではない。子どもが寝るタイミングで一緒に寝るなどして心身の回復に「積極的に」努めなければ心身の負荷が増してイライラしやすくなる。子どもの傍に片親しかいない状況が長いなら尚更その弊害は子どもに向かい、自己嫌悪や罪悪感などで苛まれ、孤立した家庭には悪循環しかうまれないように思う。

実際に自分はこの時期、頭では社会から孤立するような感覚に焦りを覚えつつも、身体では「子どもを生かす」こと、「自分が生きる」ことに必死で不安は吐露しつつも子どもに関することだけに注力していた(というかそれしか出来ん)。アンガーマネジメントについての本を読んだりして自身と向き合ったりして現状をどうにかすることだけで手一杯で、勉強などほとんど出来なかった。


とまぁ産休育休の間にできることなど実際にはほとんど「子育て」と「自身の回復」しかない。

それは勿論、産み、育てるのための「産休育休」なのであって、生んですぐ誰か別の人が常時子どもを見守り世話をし、自分が別のことに時間を割いたりする時間が設けられるという別次元のオヤスミではないということ。

子どもが1歳半前後になってようやく多少自分を追い込んだりしつつも勉強することができるようになったかな、という感じ。それも順調に思った通りの勉強プランで事が進むわけでは全くなく、1歳半頃のよく昼寝や夕寝などをしていた時期はちょこまか勉強の時間が取れたが、その後子の体力がついてきて日中ほとんど眠らなくなったりしてからはなかなか難しく、夜皆が寝静まってから、早朝に起きて、など工夫して時間を取るようにしているが失敗するときは失敗する。(正直に言って去年は失敗に終わった。)

とはいえどちらの期間も育休期間はとうに過ぎており、また我が子が比較的まとまって眠る子どもだったということも考慮すべきかと思う。私自身は元から勉強は嫌いじゃなくどちらかといえば好きな方なので、勉強嫌いだから勉強することに関心がない、などといった理由は当てはまらない。


この発言が問題に感じるのは、

1。この産休育休期間に実際に子育てしてきた人の発言に思えない点
誰もが安産で子どもがまとまって眠る存在だとは限らない。出産は命懸けで、命を落とすリスクがあることも知られているはず。病気や事故で入院する人にこのリスキリングを提案するのか?という話。出産や育児を軽んじている、といわれても仕方ない。

2。それを可能とした存在を見聞きした人がそれが不可能な存在への圧力をかけるリスクがある点
人によっては身近に頼れる存在がおり、子育てを協力して手分けして行うことが出来る人もいると思う。(思いつくのは、親に見てもらってる間に身体を休めるなど。)でもそれが全世帯のすべての家庭に当てはまるわけではない。あの人は出来たぞ、などと第三者が出来なかった人にふっかける場面は想像に難くない。出来なくて当然、という共通認識をすべての人が共有できるならば話は別だが、絶対にそういう第三者はいるだろうと思う。孤軍奮闘な母親もいるだろうし、これ以上追い詰めないでほしい。

3。ほかにもっと出来る改善がある点
育休から復帰しやすくする、誰もが育休をとり、子育てをする期間を設ける、所得の制限を撤廃する、などなど出来ることはもっと他にたくさんあるように感じる。

もっとも、この件一番嫌いだなと私が思うのは、日本特有の「休んだら穴をあけ、迷惑をかけるから多少の風邪やしんどくても仕事をする」という価値観が温床にあるように思える点で、休む時は休み(大前提)、復帰するときは以前のようにバリバリと働き、すぐに戦力となることはできない、ということを職場のみなが良しとして(というか当たり前として)受け止め、支え、協力しあうべき、と思うんだよな…そういう価値観が当たり前になっていくべきだと思うし、そのように支援していくべきだと思う。


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