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息子とレゴリラな旅 そのご

タワーの中は上空故か、日の当たる場所はすこぶる暑かった。しばし外を眺めた後地上に戻りコアラを観た。ちょうど餌やりの時間だった為所狭しと人が群がり、一瞬で息子とはぐれてしまった。(父と一緒にいたのは不幸中の幸い。)お腹が空いたというのでカフェに入ってパスタを食べた。息子用にお子様パンケーキなるものをオーダーしたがフォークが進まず結局これは親が平らげることとなった。

出来たばかりのジャガー舎を訪れたがうまくそのジャガーを見つける事が出来ず、別の場所に移動したところにジャガーを観ることが出来た。あれはどういうことだったのだろう…

寒空の下ボートがスイスイと水面を滑る様子を空から確認していた息子はすかさず『ぼくはあれがやりたい!』とアヒルボートを所望。ちょっと待ってくれ…さすがに寒い。しかしこれも貴重な経験、背に腹は代えられぬ。私は一度ロッカーまで戻り鍵を開け上着を取り出した。あんなに暑いと思ったのがまるで嘘のように肌寒く、風が身に染みる…むしろどうして上着を手に持たずにロッカーに意気揚々と入れてしまったのだろう…気分が高揚していたのかな…などと一人考えながら再び父子に合流するとボートが並ぶ乗船場へと皆で足を運んだ。

「時間は35分間です。」と告げられ、いざマイボート選択。上空ではパトカー型に乗りたいと言っていた息子は、いざ数々のボートを前にして気が変わったのかアヒルボートならぬレッサーボートを選択。私はこの時肌寒さに頭が回っていなかったのかもしれない、後にペダルに足を置いてから気付いた。これは制限時間まで親が漕ぎ続けるという「デスマッチ35」であるということを…!!!

ああ神様、この時ばかりは私がゴリラの様に逞しい脚の持ち主であったことを感謝します…ああ神様、だからどうか私に翌日の筋肉痛をもたらさないでくれたまえアモーレ…


気付いたのは息子が意外と上手に舵を切るということ。他にもこのデスマッチを優雅に楽しんでいるご家族、カップル、友達、仲間…など多数いたけれども、どの船にもぶつかることなく右へ左へとハンドルを回しながら船を操縦していた。無事35分間漕ぎ続けた後、元居た場所へと引き返しボートを返却すると「楽しかった!」と満面の笑みを浮かべた息子を見て、やって良かったと思った。君の笑顔の為なら喜んでこの脚を捧げよう…

その頃息子推しのホッキョクグマさんはご飯の時間。飼育員に与えられた餌をムシャムシャ食べる姿を見守り、園の動物が映るフレームで撮れるプリント倶楽部で一枚記念撮影。ホッキョクグマに感化されたのか息子は「ぼくも」と糖分を欲しがり、チュリス(誤字ではない)を与えると一心不乱に頬張った。時刻は16時半。閉園まで間近、いい頃合いである。小さな公園にあるような遊具で多少遊んでから動物園を後にした。まさかオープンからクローズまで動物園だけで何時間も過ごすとは思いもしていなかったが、満足した息子は昨日同様父の腕の中で眠りについた。

他の施設に足を運ぶ時間はなく、そもそも当の本人は眠っているので抱えながらあちこち歩きまわるのは難しい。名古屋駅へ戻るととりあえず夕飯をとろうと思った店の付近まで移動した。しかし夕飯にはまだ早いので近くにあったカフェに入り、小倉のクロッフルとカフェラテで一呼吸置くことに。

オーダーが通るとキッチンから甘い香りが漂ってきて鼻をくすぐる。いざ運ばれてきた餡子の乗った香ばしいそれを口に運ぶと、疲れた身体に優しい労わりが染み渡るような気がした。色々あったけど良い(濃い)二日間になったねと夫婦で笑い合う。

カフェでは終始眠っていた息子、やむなく移動した食堂で親が名古屋飯に舌鼓を打つ間も深い眠りから覚めることは無かった。

食事を終え店を後にして歩き始めた頃、重い瞼を開いた我が子はココハドコダと言わんばかりに担がれながらも周囲をキョロキョロしている。「もうママ達ご飯食べちゃったんだ」と説明してもまだ頭が回っていないのか、ふーん?といった様子なのでコンビニで息子の好きなたまごサンドを買った。待合室でガブガブと食べ進めたたまごサンドはあっという間に無くなり、新幹線の時間がきて帰路に着いた。

満月が照らす夜道を歩きながら楽しかったねと話す。このまま時が止まればいいのにー……

ふと恒川光太郎の『秋の牢獄』を思い出して有限の尊さをそっと胸に、今年度の我が家の一泊二日の旅を終えた。

この後めちゃくちゃ片付けした。(アドレナリンサンキュー)



end.

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