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映画コラム③『レオン』

『レオン』は、私の好きな映画と聞かれたら、必ず答える一つの映画。

レオンは、1994年製作のフランス・アメリカ合作映画。舞台はアメリカだが、たしかにフランス感が漂っている。
リュック・ベッソン監督によるアクション映画というくくり。
日本での公開時のコピーは「凶暴な純愛」。(凶暴な純愛と決めた人、本当に素晴らしすぎると思っている。誰だろう。)

物語のサマリーは、
ジャン・レノ演じる孤独な殺し屋のレオンと、家族をギャングに殺された少女マチルダが心を通わせていく、というもの。

特に話題になったのは、当時13歳だったナタリー・ポートマンがマチルダを演じたことだろう。

そして、凶暴な純愛の映画の主役になるのはいうまでもなくこの2人。
愛にうちひしがれ社会を知らずに大人になった殺し屋レオンと、同じく最愛の肉親を奪われた早熟な12歳の少女マチルダ。

このレオンの魅力を語るにあたって、言及するかは迷ったが、、、やっぱり触れておこう。

この『レオン』の作られた25年前に比べて、性的虐待や児童搾取に対して敏感になった現代。
今の感覚で見ると、親を殺された10代の少女を中年男が保護するという設定からして少女の弱みを利用していて不適切だと物議を醸している、、主演を演じたナタリーでさえ、インタビューではこの点についても触れていた。

だけど、それでも、私はそうは思わなかった。今でも思わない。

補完関係を与え合う


私はレオンを、シンプルに、

人の弱さと愛の強さ

を伝えてくれる名作だと思っている。
言葉を選ばすいうと、当時全くロリコン映画など感じなかった。今も思わない。

それに、この映画は、私に、

補完関係を与え合う

という恋愛の見本を教えてくれたような気がした。


幼きナタリー・ポートマンが演じる、マチルダ

彼女の穢れ無き瞳は、眩いばかりの生命力にあふれ、ひたすら純粋で美しい。透き通った美貌と、彼女の演技力に、私は惹かれた。私は一瞬で彼女のファンになり、iPhoneケースもマチルダだ。この映画のこの年齢でのこの演技力は驚異的としか言いようがない。

見ている私ハッとするような妖艶さを見せたかと思えば、歳相応の無邪気なあどけない可愛さも見せてくれる。セリフのないシーンは特に素晴らしく、目や仕草だけですべてがこちらに伝わってくる。とにかく可愛いのだ。

そして、虚ろで物悲しい瞳で孤独な殺し屋を演じるジャン・レノ。
ジャンの殺し屋独特の臆病にも見える身のこなしには鳥肌が立つ。魅力をそそられる。


そんな主役の二人の対比が物語に深みを与えている。互いに心と体の未熟さから周囲に都合よく利用されている。前述したが、二人が組むコンビの補完関係こそ与え合う恋愛の見本であり、そこには年齢差を全く感じなかった。


1番印象深いシーンは、
女にしてほしいと愛を告げるマチルダに、レオンが涙ながらに初めて自分の過去を語るシーン。
ここでは少女から女になろうとするマチルダと、大人になれなかったレオンの繊細なやりとりが描かれている。
このシーンは、ロリコン映画と揶揄される理由の一つのシーンではあるが、極めて素敵なシーンだと思う。
レオン自身が過去と向き合い、マチルダに受け入れられたことで存在意義を見つけることができる大切なシーンではないだろうか。

脇役の「快演」がバイブルに

またこの二人だけではない。
悪役の怪演で話題になった、
ゲイリー演じる悪徳捜査官のスタンスフィールド。

彼にはビックリするくらい全く同情も起きない。笑
冷酷さと異常さを完璧に表現したこれまた歴史的演技だ。

悪役もどこか同情を誘ってしまう時があるが、ここまで振り切ることこそが真の悪役なのだと思う。

その見事なまでの怪演であった、ゲイリー・オールドマン演じる本当に憎たらしいラスボスと決着をつけるまでの過程で、
それまで冷徹な殺し屋として仕事を遂行してきたレオンが、マチルダを守るためだけに最後の最後で感情をむき出しにする。


子どものままだったレオンが見せた愛情表現は、まさに“凶暴な純愛”。レオンにぴったりの表現だと思う。

悪役が引き立てた、凶暴な恋愛なのだと思う。


世の中を多少知った今でこそ不器用だなとも思うが、ピュアすぎて何度も何度もみて、最初に見た時と同じように感動してしまう。


大人の女になりたいと告白した少女マチルダは、今では2児の母となった。

私はといえば、周りに支えながらも、時に理不尽に耐えて、自分の不甲斐なさに逃げては向き合っては逃げて、周りに劣等感を感じながらも、がむしゃらに出社し働いている。

親と喧嘩した時、早く自分で自立して自分でお金を稼げる社会人になりたいってずっとずっと思ってた。
一人暮らしもしたくて、ウズウズしていた。学生時代は早く卒業したかった。憧れの社会人に今なれているが、大人になったのだろうか?

大人になるとはどういうことだったのか、大人になる前の、あの頃の感覚を取り戻したくて『レオン』を見返したくなる。

明日からもがんばろう。一人の大人として。

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