見出し画像

読み間違い

 高校三年生、春。新型ウイルスの影響で緊急事態宣言が発令され、約2ヶ月間の休校を余儀なくされた。
 6月末の文化祭で引退を迎える私たち軽音楽部にとって、文化祭を行わないという1つの絶望の知らせを聞いても尚、軽音で何か1つでも出来ることは無いのか、そもそもライブはできるのかという諸々について、ライン電話で済むものをいちいちカッコをつけてzoomを開き、会議ぶった会話をしていた。

 部活動の運営に関して、文科省が方針を出していたらしかった。文科省が文部科学省の省略であることはもはや言うまでもないが、今回の全ての原因がこの省略の仕方にあった。

 zoomでは部長を含めた3年生数人と、2年生数人が繋がれていた。
 その時の私は部長の話している間、見えないところでスマホをいじり、当時ハマりたてのジョジョの奇妙な冒険を読んでいた。

 話の中で部長が「ちょっと一旦外れるから、青砥とA(2年生)で部活の方針の資料探してよ。“ぶんかしょう”のサイトにあると思うから」とだけ言い残し、ルームから一時的に退席した。

 残されたうち、私と後輩のAを中心にそれについて調べようとした。
zoomで私のパソコンの画面を共有し、部長の言った通り、“文化省”と検索ワードに打ち込み、サイトを片っ端から調べた。
しかし、そこに部活動に関する資料は何ひとつとしてなかったのだ。
 当たり前である。私たちが必死に調べて見ていたサイトは「文化庁」のサイトだったのだ。

 しばらく調べても何も見つからない私たち。
 10分近く悩んだ果てに、私はようやくその真実にたどり着いた。
「、、、もしかしてあいつ(部長)、文科省(もんかしょう)のこと間違えて“ぶんかしょう”言ってたんじゃね?」
早速文科省のサイトを覗く私たち。お目当ての資料がすぐそこにあり、事なきを得た。

 しばらくして部長が戻ってきたため、ことの始終を伝えた。
 すると部長は「っはー!間違えちったよー」と呑気なご様子。
 お前の誤読でこちとら真剣に悩んでたんだよ。という気持ちを堪えてAmのコードを強く弾いた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?