生まれ変わり(1300文字前後)

ロンスチィーが亡くなった。暴走した馬車に轢かれそうになった、男の子を助けて。僕は毎日のようにそれが夢に出てきて、この村には時間というものを日の明かりでしか体感できるものはなく、僕は後に時計というものを知るまでは、いつも広場の日時計というひどく曖昧なものでしか分からなかった。ロンスチィー、愛称はロン。ロンが亡くなってから、僕はあることをきっかけに、「神秘」という存在に気づくことになる。
白い息が出る、外の氷が張った季節。僕は目的もなく広場に来ていた。「へっくしゅん!!」くしゃみが出る。目的もなくと言ったが、実は夢にロンが出てきた。
「やあ、久しぶりだね。日時計は何回まわったんだろうか。僕は小鳥に生まれ変わった。この夢が終わったあとでいいからあの日時計の広場に来て欲しい。伝えたいことがあるんだ。」
真っ暗な夢にロンの声が響いてそう聞こえた。僕はロンの一応1番の友達であった。ロンが小鳥?なんでか分からないが、寝起きの重い体を引きづり、歩いて朝日が昇るのを待った。そして広場に着いた。
しばらくすると声変わりもしていない賢そうな声でロンの声が聞こえた。
「やあ」「…ロン?」
振り向くと胸元が優しくふんわり黄色で、目は宝石のように青く輝き、翼は薄いグリーンの小鳥がこちらを見ている。「え?ロンかい?綺麗な小鳥だ…僕を呼び出してどうしたんだい?」ロンの姿に驚きながら、僕は言葉にできた事を聞いた。「生まれ変わりって本当なの?」
ロンは喋った。「僕は知ってしまった。神様とやらに会って、【君は世界を冒険してくるがいい、危険が伴うが君は前にできなかったそれをやることによって生きてる意味を知るだろう】って言われたんだ。」「嘘のように思うだろう……ああ、僕もそう、だった…」「記憶が残るのは珍しいらしく、だから僕は君に逢いに来た」
僕はなんか涙が溢れてきた。「ロン…姿は変わったけど僕を忘れなかったなんて…最高に光栄さ!ロン、お腹は空いてないかい、パンを持ってきたよ、僕はあと君が好きだった【世界の不思議】、あの本を持ってきた」
ロンに赤い表紙のその本を見せた。
ロンは言う。「僕はその不思議に挑もうと思うんだ」
「え?挑む?」聞き返してしまった。
「そう、1番北の海には氷がなくて、南の海には氷があるとか、空が7色に光るのとか、砂漠の国には大きな遺跡があるとか見てみようと思うんだ」ロンは静かに確実に言う。
「そうか、じゃあ行っておいで!!」
僕は言った。
「君が世界の広さを知り不思議と出会った事、僕はこの街以外は出れないから、どうだったか教えて欲しい」
本でしか知らなかった事、ロンが見に行ってくる。すごい、勇者みたいだ。僕は心がドキドキしていた。
ロンはゆっくり喋った。「僕がまた生まれ変われたのは君のその願う力だね、きっと」
実際ロンが亡くなってからは僕はひとりで朝も夜も迎えていた。寂しかった。
「そうか、分かった」「ロン、スタートだ!」
僕は言った。
ロンも応える。
「ああ、待ってておくれ、君と冒険に行ったかのように詳細に伝えるさ」
僕の右肩に乗ってロンは言った「良い人生を!良き旅を!」
美しい姿に生まれ変わったロン。とても勇ましく感じた。
-end-

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