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指導者適性とは、なんぞや?

当方は幼少以来、ベイスターズマリノスのファンだというのは過日述べたが2024年シーズンでは本日(5月16日)時点で、ここ数年で最も厳しい状況(ベイスターズ:最下位。マリノス:20チーム中14位。ただしACLの兼ね合いで2試合未消化)に追い込まれており、いちファンとしては心の痛むシーズンとなっている。
相手あっての競技だし、リスペクトという概念が定着した今では「自軍さえ良ければ、他はどうなってもよい」という考え方は厳しく評価される。
それでも「負けに不思議の負けなし」(江戸後期の大名・松浦清/清山の言。野村克也が流用したことで知られる)とはよく言ったもので、負ける原因は必ずある。幼少以来のいちファンとして見るに、「指導者が弱い」と思えてならない。

「適性より経歴でコーチを選ぶベイスターズ」
本日現在ベイスターズの監督を務めるのは『ハマの番長』の渾名で知られる三浦大輔だ。悪名高きTBSベイスターズ時代の常軌を逸した為体に呆れた内川聖一らが横浜を後にしたのに対し、最後までチームを見捨てなかった忠誠心が内外から評価された。「ウチの代で一番下手だったのは大輔だったが、一番練習したのも大輔だった」(斎藤隆。三浦の同期)、「すごいストイック。プロではこういう人が勝ち残る」(相川亮二。現横浜コーチ)と選手としての評価も高い。公式の『歴代ベストナイン』企画にて、三浦は『カミソリシュート』の平松政次を差し置いて先発部門1位に選出されている。(添えておくと、中継ぎ:盛田幸妃、抑え:佐々木主浩、一塁:駒田徳広、二塁:R・ローズ、三塁:田代富雄、遊撃:石井琢朗、外野:鈴木尚典、屋舗要、ポンセ。ソース無しが心許ないですが。)
だが選手としては優秀でも、指導者は別の技能が求められる。三浦を見ているとコメントが短い。

「我々がやるべき事をできていない部分もある。借金をなくしていくためには(ミスを)なくしていかないと」(2024.5.15)

「形は何回か作ることはできたけど1点だけ。いい当たりもあったけど、あいだに抜けなかったりついてない部分も多かった」(2024.5.14)

「今日は繋がりが悪かった」(2024.1)

どれを聞いていても簡潔な感想は述べているが、何をどうすればいいのかを語ることができていないように見える。現在のDeNA社になって以降は監督がインタビューを拒否することはご法度とされており負けても表に立たなくてはいけない辛さは窺えるのだが、これだけ喋れないと「自己分析ができない」と思われ、喋れな過ぎると頼りない印象を与えてしまう。
また投手出身としては異例といえるくらいに野手の采配で積極的に手を打っているが昨年はクリーンナップ型の佐野恵太を1番固定、今年はコンディション不良の牧秀悟の4番固定は疑問の声が多い。
球界の宿命として「現役時代の功績に応じて役職を与える」風習が濃く、張本勲やイチロー、定期的に待望論が展開される松井秀喜など「選手実績はすごいのに監督にならなかった」人は今尚稀だ。よってどこのチームもプロのコーチは「OB選手」で多数を占めている。OBを繋ぎとめて古いファンを引き留めるのも一種のファンサービスでもあるのだが、キッパリ申し上げてしまうと今横浜に入閣しているコーチの内「他球団でもやっていけそうな指導者」を挙げるなら田代富雄と石井琢朗だけだろう。
逆のパターンとして横浜で研修した後、巨人監督として高い評価を受けた藤田元司の成功例を藤田を受け入れた横浜球団が学べていない事実は大打撃と思えてならない。今からでも遅くないので藤田に倣い「他球団で研修」することをもっと推奨したり、アレックス・ラミレス監督就任の件のように「レポート3枚以上でビジョンを述べてもらう」制度を定着化させたりなどして、球団にはもう少し指導者適性に気を払ってもらいたいものである。
三浦の監督としての期間は今年が契約最終年だと聞く。今年も失策数がワーストになるなど「三浦には厳しさが足りない」と指摘されることは少ないないが、強権づくなリーダーよりも選手にのびのびやらせるタイプが上手く行く昨今の潮流にに合致しているのは光といえる。

「マリノスの苦戦は頑迷な肝煎り政策」
一方のマリノスは、オーストラリア代表のスター選手だった、ハリー・キューウェルが就任して1年目に当たる。リーズ、リヴァプールで活躍しオーストラリアA代表の最年少出場記録を有し、妻は女優・シェリー・マーフィーで子供は三人。クラブやファンと揉み合いになることはあるが、真面目な人柄で知られ異性・下半身トラブルは皆無。
三浦同様こちらも典型的な元スター選手監督であるが、監督としては38勝57敗24分と成績は芳しくなく、豪州人監督が3人も続いたことで「コネクションありき」という懐疑論は就任当初から唱えられていた。現在のキューウェル体制ではトップ下を二人置く2IHを軸に戦っているが、ACLはマリノス史上初となる決勝進出を果たした一方で、攻撃に力を入れている割に得点が少なく、カードとピンチの多さが目立つ。5月16日時点で4勝4敗4分(リーグのみ)、まだ日が浅いとはいえ得点が少なく失点が嵩んでいる現状に加え、数的優位に立った試合で1勝もできていないことでキューウェル自身及び、肝煎りたる2IHは成果・評価が捗々しくない。全体を見ると神戸、町田と非ポゼッションチームが上位を占めており、ポゼッションを看板とするマリノスの不安は大きい。
中村俊輔の反発を退けてまで醸成した優れた組織力で直近5年間で2020を除く4回は2位以内(2019,22は優勝)と優秀な成績を誇る。とりわけ19年優勝時にSDとして辣腕を振るった小倉勉や、マルコス・ジュニオールを筆頭に助っ人の目利きが頭抜けていた監督のアンジェ・ポステコグルーの功績は巍巍として高い。
しかし今のマリノスはレギュラーと補欠の力量差が非常に大きく、A・ロペスら助っ人頼み色が強い。特にロペスがスタメンに入らなかった試合は1勝もできておらず、連戦を見据えたオフの補強ができなかったのはフロントの力不足も目立つ。
遅まきながら浦和から西野務の招聘が内定しており、夏の補強は積極的に動くことはおそらく間違いないが、リーグ戦における苦戦は強化部/SD・GM職に空白期間を作ったフロントの失策がまるまる現れた結果にも見える。
肝煎り政策たる2IH断固遂行の成否以外でキューウェルが評価を大幅に引き上げる秘策は一つあると見る。若手登用だ。山根陸以外の若手が伸び悩んでおり、マリノスと覇を競う川崎も主力の高齢化で苦戦している。それでも今期に入って榊原彗悟や、塩貝健人という新しい顔の登場は不安を一蹴できる光となり得る。

「まとめ~今後の展望は指導者次第~」
指導者は「言葉」の商売である。モチベーター型にせよ、理論型にせよ、若手登用型にせよ、ベテラン重視型にせよ言葉で技を教え、優勝を目指し進路を示さなくてはいけない。ベイスターズは田代富雄に石井琢朗、マリノスは松永成立と優れた指導者はいるが、ベイスターズは名は出さないが成績もファンからの評価も芳しくないのに特定の人ばかり繰り返し重用されるシステムは気になる。マリノスはユースのプレミア陥落など下部組織が振るわないのは気がかりだ。
冒頭で述べた通りベイスターズもマリノスも苦戦しているが、指導者部門において「どんなチームに行っても重宝される」レベルの人材がまだまだ少ない実態が特に濃厚に出ているように見える。

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