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二人で生きる理由(下巻)女

【貴方は奇跡みたいな人】

年中長袖を着てる私の傷に、
臆する事なく触れてきた
そんな人は初めてだった

愛が何かわからない
愛し方がわからない
それでも貴方はいつも側にいた
どんな時も隣で「大丈夫」だと笑んだ
それだけで少し、呼吸が楽になった

【信じる前に、離脱する】
それが私の生き方だった
生への執着も、人への執着も持たない私は、いつも一人だった
そしていつも消えたかった

誰にも期待しないから裏切られても傷つかない、
(うそつき)
誰も寄せ付けないし、信用しない私は、
(うそつき)
随分と寂しい大人になった

大人になる過程で、何度か「これが愛かもしれない…?」と感じた事もあった
それは温かくて、至福で、居心地がよかった
安堵し、ずっと包まれていたいと思った

でも未熟さから、相手に気持ちをうまく返せなかった
自分の言葉の重みが怖くて、
「愛してる」も「好き」も、
喉元まで来てるのに、どうしても言えなかった

本当に、大切だったから……そして失った

結局失う位なら、いっそのこと、
私は‘嘘’を吐くことを覚えた

「好き」も「嫌い」も「愛してる」も=同価値になった
自分でも驚く程、息をする様に簡単に吐けた
心無い其れは、逆に私(心)を追い詰めた
相手の本気が、好きが増す度に、
末恐ろしくなって逃げ出した


【私の思う愛してる、は……】

自分から会いたいと思う人
自分から触れたいと思う人
声を聞きたい人
頭から離れない人
ずっと側にいてほしい人
笑顔を守りたい人
未来を共に歩きたい人

【全部……貴方だった】

もしこれが愛だったら、どうしよう
正解か不正解かもわからない、だって私は愛を知らない
でもこの気持ちだけは本当なの

沢山困らせたし、沢山傷つけた
貴方の差し出す手を何度も拒絶したし
貴方じゃない人と夜を過ごした
「それでも何で…分かろうとしてくれるの?」

戸惑い怯え逃げ出す私を、そっと引きよせ抱きしめた
心の中のもう一人の私が泣いた
(これ以上優しくしないで、怖いよ…)

〈私には幸せになる資格がない、その価値がない〉

過去のトラウマに足をとられる
痛みだけが贖罪なんです

私は愛が怖い、目に見えないから
目に見えるものばかりに固執してしまう

でもそれではダメなのかもしれない
全てを許されようとも思わない
それでも大切な人の気持ちはこれ以上傷付けたくない
私は、ずっと貴方が怖かった
どんな私でも受け入れてしまうから…その優しさが怖かった

でも次もし、貴方の手をとる機会が訪れたら、迷わずその手を繋ぎます
私の心に触れていいのは後にも先にもずっと、
貴方だけだから……

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