②場所*古書店
テストも英検も終えて、羽を伸ばしきりました。
お久しぶりです。肺です。
名前に特徴が欲しかったので少し変えました。
少しの間であった素敵なことを、
少しずつ書き留めていこうと思います。
それでは今日の記事も、何卒。
⏳
オレンジ色の光が眩しい下校の電車。
あと二駅でで最寄駅というところ、友達たちがたまたま皆んな、
次の駅に用事があるということになり、急に寂しくなって、
久々の散歩も兼ねて、私も電車を降りました。
この駅で降りたら必ず通る散歩道。
いつもの猫、新入りの猫、
見つけては挨拶(それは口に出したり、出さなかったり)して、
寂れた街並みを、一人で歩いていました。
ふと、せっかくだからとお店に寄りたくなり、
閑静な商店街に佇む、お気に入りの古書店に入りました。
店内は然程広くはありませんが、
そこは、100年の時を生き延びてきた、ロマンに溢れた本たちで満たされていて、一つの世界のようなので、
私はその古書店ににいると、別の次元や未だ知れぬ異国に訪れている気がしてならないのです。
いつものように、私はお気に入りの棚で、どれを買おうか吟味して、
店長さんと(店長さんの知識や昔話をお聞きするのが主ですが)お話ししていると、20〜30代の三人組が来店しました。
三人とも旅人のようなゆったりとした服を着ていて、手にはそれぞれ、大きなレンズのついたカメラを持っていました。
「ぼくたちあまり本読まないけど、すごくいい雰囲気だなって」
撮影してもいいですか?と、気さくな男性が店長に尋ねました。
店長さんは快く許可して、本を出したりしながら、この古書店のことを紹介していました。
話を聞くと、彼らは仕事で街のPR用の写真を撮って周っているとのことです。
店長さんとのお話をそばで聴きながら眺めていると、そのうち1人の男性から話しかけられました。
「何を勉強しているの?」
「油絵をしています。」
「そうなの?文学かと思ったよ。」
「完全に趣味で…。写真を撮るのも好きです。」
「最近じゃスマホでとても綺麗に撮れるよね。」
「いえいえ、大きなプロのカメラ、とても憧れます。」
スマホのカメラでは捉えられないロマンが、プロ用のカメラにはあると切に思っていたので、それを使って沢山の場所を巡る彼らは、私には本当にきらきらして見えました。君みたいに本をたくさん読むことはとてもいいことだよ、と言ってもらえて嬉しかったのは、素直な気持ちでした。
「よし!学生さん、そこに立って?」
突如カメラを構えたその男性に戸惑いながらも、言われた通りに本棚の前に立ちました。流石に自分が被写体になることは察しましたが、どうしたらいいのか分からず、徐に持っていた本を読みました。
パシャっと、カメラだけの特別な音が、パシャ、パシャパシャ、私を捕まえました。
写真はとても苦手です。カメラを向けられても笑顔でいることが苦手で、年賀はがきに載る家族写真の私は、いつも口を結んでいました。
確かに彼のカメラにも、横顔の私は無表情で本を読んでいましたが、気持ちは違いました。特別な音が私に向けられる時、私は確かに嬉しかったのです。
それから1時間くらい、私たちは店長さんのお話を囲む形で飽きずに話をしていました。
「僕ら漫画なら読んできたけど、」
「漫画いいですね、AKIRA好きだなぁ」
「古いね〜!」
「大友といえばなぁ」
学校では絶対にない会話でした。私は友達たちとの会話の中だと、一度は「何の話だろう」と会話に入ることを諦めるタイミングがやってくるのですが、私はその日、確かにその会話の中にいました。友達が話しているのを聞くのは好きでしたが、あんな風に飽きずに会話することも楽しいんだと、久しぶりに感じていました。
それでもやっぱり時間は有限で、私たちは古書店から出て、実生活に戻らなければなりません。
前述に言った通り、私は古書店を異国だと錯覚しています。この古書店を自宅から一駅分離れた場所だと認めるには、ロマンに溢れすぎているのですから。
あの古書店は、私に本だけでなく、人とも出会わせてくれました。外に繋がる扉を開けると、空港に似た空気さえも感じます。
なんていい日だったんだろう。
十字路を出ると、少し先に店を出ていた彼らの背中が見えました。SNS越しに活動する人を見て思ったことはありましたが、「仲間っていいな。」と、彼らを見て思ったのです。その時の焦がれる気持ちは、とても忘れられないでしょう。
⌛️
書きながらだらだらしていたら、進級して高校3年生になっていました。
文章を書くことは好きなので、完全に止めることはないと思いますが、更新頻度は、、お察しください。
読んでいただき、ありがとうございました。
次回も何卒。
追伸
今日の絵は、推し野良猫です。
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