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①小説*江國香織

江國香織さんの言葉になりたい。

こんばんは、肺です。
前回のブログですっかり言い忘れてしまいましたが、
このブログを始めたきっかけは、私の喋り下手克服のためでもあるんです。
学校外でカタコトの異星人のようになるのが、本当に厄介で…。

このままでは、学校であだ名になっている「火星人」が洒落にならなくなってらしまいます…。

それだけは阻止したいです。
何様ですが、どうか生温かい目で見守ってください。いえ、読んでください。
何卒。


江國香織さん(以下、江國さん)の作風を、さっくり言うならば、
「すみれの砂糖漬け」です。

これは江國さんの詩集のタイトルでもあるのですが、(なんて素敵なタイトルなの)
この「すみれの砂糖漬け」という言葉が、江國さんを一言で言うのに、
ぴったり、だなぁ、って。

口の中に入れた一粒から、すみれの香りと、思ったより強い甘さが広がる、あの感じに。
紅茶に入れてみると、すみれの青色が紅茶に染みて、化粧のようなあじのする、あの一連に。

江國さんの小説は「恋」をテーマにしたものが多いです。
空想ばかりのアル中の妻と同性愛者の夫(『きらきらひかる』)といったように、その設定は歪で複雑なものばかり…。
これがまた小説を読む楽しみである「自分とは全く違う思考回路をした人間の思考回路が覗ける」という点を悉く満たしてくれます。

それにしても不思議ですよね。

そうやって「自分とは全く違う思考回路をした人間」だと思っていた登場人物が、自分と同じような感覚を持っていたりしませんか?
慣れないもので、そんな人物と出会うたびにドキドキしてしまいます。

なんでドキドキするんだろう


江國さんの作品を読むたびに、「恋愛ってなんぞや」という私の詰まらない、というか果てしない疑問に答えてくれているように感じます。
あとは私が読み取るだけなのですが。
難しいなぁ。本当に私は本を読むのが下手っぴです。
是非、江國さんを知らない誰かにも味わって欲しいです。
優しい声で教えてくれているのに、言葉にならない感動になってしまって、知りたいという欲求が止まらなくなるこの感じを。


恋愛はなんぞやという、知的欲求。

 今夜、一体何組の恋人たちが一緒に食事をするんだろう。ぴかぴかに磨かれた窓に部屋の電気がうつっている。紫のおじさんも紺くんの木も、ホモもアル中も、みんな薄っぺらなガラスの中にいた。
                       『きらきらひかる』より

先述で少し触れましたが、江國さんは詩も作ります。

江國さんの言葉が、(情景が、擬音が、登場人物が、登場する物が、そう何もかも)大好きな私からしたら、
江國さんの詩集は、大好きなお菓子が入った木の器のようで。

ほら、おばあちゃんの家の長机の真ん中に置かれた、あの木の器です。あるいは花柄のお盆の上でしょうか。そこに広げられたチョコレートやお煎餅やエトセトラ。あまり食べるとお行儀が悪いようで、少し遠慮したいのに、器に延びる手は正直で…。

器の上のキャラメルが欲しい
江國さんの詩は私の頁をめくる手を止めません。
実際に、通学の電車の中で読んでいたら乗り過ごしました。
(意味もなく早い電車に乗っているので、遅刻はしませんでした。)

詩は中原中也や北原白秋、萩原朔太郎を読むのですが、
(近代の詩と現代の詩の味わい方の違いについては、またいつかお話ししたいな)
江國さんの詩には、他にはない憧れを抱いてしまいます。
こんな素敵な言葉に溢れる生活を、感情を、私のものにしたくなってしまいます。

ひとつ、江國さんの詩を紹介します。

知ってる
蛇口に足を向けてバスタブに沈むと
左ななめうしろがあなたのうち
                          『うちのバスタブ』

電車の中で、バスタブにゆらゆらと揺られる私の腕を想像する。
足を見てみると、あんなにも余裕のあったバスタブの幅が窮屈に感じられる。
膝を曲げて、口元を沈めてみる。左ななめうしろにあるのは、
そうして想像してしまう。いや、妄想してしまう。
なんとなく分かるようで、なんとなく分からない。
そんなやるせない気持ちになって、何故だかそれが心地よかったり。

昨日は湯船に浸からなかったな。
シュー、と乗り過ごしの合図が聞こえて、「あ、」と声が出ました。

すでに江國香織さんを知っている方には、是 非『江國香織ヴァラエティ』を読んでいただきたいです。
江國香織さんの旅行記と、好きな音楽、本、愛用している日用品まで、江國さんの生活の一面が詰まっている一つの雑誌です。
市立図書館でしつこくこの一冊を手に取っています。飽きません。

⌛️

読んでいただきありがとうございました。

次回も何卒。

追伸
今日の絵は、ぬいぐるみのシロップさんです。

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