まさかの検査結果!

 ひなちゃんの高熱は二日経っても下がらなかった。
 普段、熱があっても元気よく走り回ったり大好きなフルーツをむしゃむしゃとたくさん食べたりするひなちゃんもこの時ばかりはぐったりとソファーに寝転がり動かなくなってしまっていた。
 触ってみると体中からほかほかと湯気すら出ているように感じた。
 さすがに心配になり、念のためにと先生が予約を入れてくれていたこの日受付開始時間ぴったりに小児科へ再度向かった。
 診察室で検温をすると、40.5度とあまり見たことのない数字が体温計に表示され血液検査も追加された。
 ぽたぽたと抗生物質の点滴をしつつ、血液検査の結果を待った。
 点滴が終了すると看護師さんがやってきて、注射針を外すのかなと思いきや、
「点滴は終わりですが、ルートはそのままにしておきますね。先生の指示です。」
と言われ、針は抜かれないまま、ひなちゃんの腕もろとも包帯で厳重にぐるぐる巻きにされた。看護師さんの言う「先生の指示です」がやたら意味深に感じられ、
(何その伏線めいたやつ。起承転結の「転」みたいな部分作らないで。無駄に心配になるし、リアルストーリーで求めてないって。)
と部屋を出ていく看護師さんに言いたくなった。
(このまま帰る?わけないよな!追加の何かが必要なのか?だとすると別の病院に行くことになるのかもしれない。)
と突如として不穏な展開を予測せざるをえなくなった。
 先生に呼ばれ、おどおどしながら診察室に入ると、血液検査の結果の説明がされた。通常0.3程度のCRPが6以上あること、通常9000程度の白血球が19000もあることから何らかの細菌やウイルス感染が疑われ、念のため入院できる病院に行ってほしいとのことだった。
 説明を聞きながらPCRならコロナの一件で聞いたことがあるけどCRPって何だ?白血球って「働く細胞」で病原体をぼこぼこにしていた、いかついキャラだったよな?とたいして回らない頭をフル回転させどうにかこうにか先生の説明を理解しようと務めた。
 それから、紹介状を書いてもらいながらほとんど動かないひなちゃんを抱っこし、入院になる場合の準備に思いを巡らせた。
 この日に限って夫は出張ですぐに何かを頼める状況ではなかった。
 私一人で初めての病院にできるだけ早くひなちゃんを連れて行かなければ、もし入院になったらまず誰に連絡したらいいだろうか、準備はどうしたらいいだろうか?と様々な心配が浮かんできた。
 明らかにしんどそうなひなちゃんを抱え、待つこと数10分、次の病院候補が決まったとの連絡が看護師さんから入った。
 ただ、看護師さんを通じ、紹介先の病院から入院になった場合についての質問をされた。
 内容はひなちゃんのことではなく私たちについてだった。
 視覚障害のある私たちが付添人としてどの程度のことができるのか、具体的には一人で動けるかどうか、ひなちゃんのお世話ができるかどうかという基本的なことで病院の負担が多ければ受け入れてもらえないような気すらした。
 自分が親であっても看護者として無条件に認められる存在ではないことを痛感し、どれほど自分が努力しても、超えられない壁があるように思えた。ひなちゃんに対しても、とてつもなく申し訳ない気分になった。
 しかし、落ち込んでいられる余裕など1ミリも無い。
 自分自身のことでひなちゃんの受け入れが拒否されることや、それによりひなちゃんの治療が遅れることなどありえないのだ。
 瞬間的に決裂させてはならない交渉なのだと感じ、気合を入れた。
 私は、仮に入院になったとしても病院へは自分自身で行けること、1度付き添ってもらえれば病室内や病棟、院内のコンビニまでも行けるようになること、ひなちゃんのお世話は私たちでできることを強く伝えた。
 正直方向音痴な私が1回教えてもらうだけで全ての移動ができるようになるというのはちょっと盛りすぎなような気もしたが自信の無さを見せるわけにはいかなかった。
 無事比較的近くの病院が受け入れてくれることになり、紹介状を持ち急いでタクシーで向かうこととなった。
 すぐに書類を用意しててくれたり、会計を進めつつタクシーの手配をしてくれたりと、速やかに対応してくださった病院のスタッフの方々へはただただ感謝するばかりである。
 ついでに付け加えておくと、次の病院は駅からもほど近く、院内の構造も想像した以上にコンパクトで、1度教えてもらえたことで売店の場所や、病棟までの行き方を覚えられた。したがって「自分のできること」について盛ったことにはならなかった。

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