おかわり必至の里帰り

 帰省3日めは、私夫そしてひなちゃんの3人でほぼほぼ自室にこもっていた。
 敷きっぱなしの布団に心地よい冷房の風、時々呼ばれて台所に食べに行くご飯やおやつ、母が代わりにしてくれる私たちの洗濯物と、自堕落ゴロゴロデイの条件が揃ってしまっていた。
 ひなちゃんはこのユートピアともいえる4畳半の部屋でごろごろしたり、昔私が遊んだどら焼きの模型を触ったり、カエルの絵のカスタネットをガジガジ噛んだり、お昼寝をしたりと自由に過ごしていた。
 私と夫は久しぶりにホラー映画を見ることに、いや聞くことにした。
 最近は音声ガイド付きの映画も配信されるようになっており、今まで以上に映画も楽しめるようになっているのだ。
 これまでは、人々の話などからストーリーを追っていたが、風景や人々の表情・動きの説明があることで、よりいっそう内容を理解できるようになった。同時にいかに視角にうったえかける演出が多いかを実感させられた。
 今回は夏ということで音声ガイド付きの映画の中からホラー映画を選んだ。ただこの某アプリの某ホラー映画が全然面白く無かったのだ。
 怪奇現象が最終的にどのように回収されたかも分からぬままストーリーは終わってしまった。ひたすら恐怖の瞬間を味わい、結論がないまますっきりもできず、さらには夜一人でトイレに行きづらくなってしまっただけであった。
夫とも
「まー、これも夏のイベントの一つということで…ね!」
と話納得することにした。
 夕方には仕事から帰ってきた兄が
「ただいまー!今日も熱いわー」
と言いつつドスドスと部屋に入ってきた。
 私と兄は性格も趣味も全く違うため、あまり話すことも無かった。私は急にやって来た兄を前にどうしようかと一瞬思った。
 ところが意外にも兄は子どもが好きで、ひなちゃんと遊んだり、話しかけたり、スマホで写真を撮ったりと楽しそうにしており、ひなちゃんネタをきっかけに思いのほか話すことができた。
意外な収穫であり、次の実家への帰省もより楽しみになった瞬間である。
 4日めは朝から大阪に帰る準備をし、おばあちゃんにも挨拶をしてから車で来た時と同様新幹線の駅まで両親に送ってもらった。
 新幹線には忘れ物をすることもなく無事乗れ、行きとは違い多目的室は借りないことにした。ひなちゃんはぐっすりと抱っこ紐の中で眠っており、普通の席でも静かに過ごせると考えたからだ。
 行きの時とは違い良い意味で印象に残らないほど移動はスムーズだった。
眠るひなちゃんを抱っこしたまま、私たちは新幹線の車内でのんびりとお菓子を食べ、お茶を飲むことができた。
 今後も特に移動中と食事中はぜひともひなちゃんにお眠りいただきたいと思ってしまった。
 こうして私たちの夏休みは終わった。
 そして、「苦あれば楽あり」、「楽あれば苦あり」ということで、自宅に到着し一時間半後、夫は東京出張へと旅立っていった。
 いつもの、夫には仕事、私にはワンオペ育児がやって来たのだ。

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