あの魅惑の1杯を無料で!

 ミルクティーというのは非常に魅力的な飲み物である。
 紅茶の爽やかな香と口に広がるミルクの甘さが絶妙にマッチし、飲む者を心地よいティータイムへといざなってくれる。気づけばカフェなどで毎回注文してしまっていたり、コンビニで購入していたりするほどだ。
 そんなミルクティーが大阪で無料配布されるという耳よりの情報を夫が仕入れた。
 今月最大の{good job}である。
 早速私たちは喜び勇んで当日大阪へと向かった。
 配布場所であるヨドバシカメラの1階入り口付近に向かうと既に、文字通り長蛇の列ができていた。私たちはミルクティーを甘く見すぎていたようだ。
 係員の方に列の最後に連れて行ってもらおうと声をかけると
「少なくとも1時間半はお待ちいただくことになりますよ。250人以上お並びいただいております。大丈夫ですか?」
と心配そうに尋ねられた。
 私と夫は一先ず列に並びながら暫しの相談タイムを設けた。
私 「どうする?待つ?」
夫 「全然どっちでもええけど」
私 「ひなちゃん、寝てるし、今なら待てるかも!待てるとこまで待とう。」
夫 「無料は大きいよな。」
ということでミルクティーゲットまでの戦いが始まった。
 私たちの後ろでいったん列に並ぶことは打ち切られ、多くの人々が、列に加わることすらできず、ミルクティーをあきらめていった。
 より一層ここで離脱してなるものかとやる気が湧いた。
 私たちが列の最後尾ということでその後ろの係員さんにはたくさんの人が問い合わせに来ていた。
「ミルクティー並べ辺の?え!もらえへんの?」
といかにも不満そうに詰め寄るおばちゃん、
「もう並べないんですね。そうですか。あー。」
と悲しそうに去っていくお兄さん
「これ、何の列なんですか?」
と聞いているおじさんと様々な人々の声が聞こえてきた。
 私たちはただひたすらゆっくり進んでいく列に並び続けた。
 基本的に私たちは列に並ぶということがあまり得意ではない。なぜならどのくらい人が前に進んでいるのか確認しづらいからだ。
ところが、今回は運よく前の親切な女の人二人組が列が進む度声をかけてくれた。
 そうして1時間が経過したところでひなちゃんが
「ふわー!」
と気持ちよさそうに目覚めた。
 ミルクティーがもらえるキッチンカーまではあと数メートルというところだった。
 ひなちゃんにはお菓子と白湯で時間をつぶしてもらい、私たちはどうにか温かいミルクティーを手に入れることができた。
 並びながら
私 「どうする?一口しか飲めない、めっちゃ小さい試飲かっぷとかだったら?」
夫 「さすがにもうちょっとあるやろ。まあ無料やから量はわからへんけど。」
という会話をしていたが、もらえたミルクティーはスタバのSサイズくらいのカップになみなみと入っていた。
 必死に列に並び1時間以上10キロ近いひなちゃんを支えながら待ち望んでいたミルクティーはとてもおいしく、甘さと温かさが体に染みわたった。
 おそらく、コンビニで午後ティーを数分で購入し、どこかのベンチでのんびり寛ぎながら飲むほうがよほど有益な過ごし方なのかもしれない。
 しかし、必死で列に並び無料で手に入れたミルクティーにはコンビニで購入したミルクティーでは味わえない満足感が確かにあった。

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