まさかのひなちゃん入院!

 病院に着くと、スタッフの方が待っていてくれ、速やかに小児科の待合室まで案内をしてくださった。
 看護師さんたちも思っていた以上に親切で
「ここまで、子どもちゃんと二人で来たの?困ったことがあったらいつでも声かけてね!」
と優しく話しかけていただけ、戦闘態勢だった私の心は少し穏やかになった。
 名前が呼ばれ診察室に入ると、はきはきとしゃべるやたら元気な女の先生がおり、てきぱきと検査を進めてくださった。
 再びの採血やレントゲン、尿検査が行なわれ、元気のないひなちゃんも痛かったり怖かったりしたのだろう、汗びっしょりになりながら泣きわめいていた。
 可愛そうではあるが私が直接してあげられることは何もない。早く直すためとひなちゃんを応援しながら様子を見守ることしかできなかった。
 再び検査結果が出てCRPや白血球、特に好中球の増加や熱の高さを考えると少なくとも数日間抗生物質の点滴が必要だろうと説明があり、入院することになった。
 早速追加で点滴を受けるひなちゃんを抱っこしたまま病室の準備が整うまで待つことになった。
 その間に義理の母や夫や、その日来る予定となっていた家事援助のヘルパーさん等に連絡を入れ続けた。
 最も問題となる入院に必要な物の準備はその日たまたま仕事が休みと教えてくれていた、私の友達が時間があるとのことで担当してくれることになった。今シーズン最大の奇跡であった。
 あれこれ連絡をし、気づいた時には、スマホの充電が20%を切っていた。
(おいー!なんでこんな時に?この1台に何万もかけてんだから、バッテリー頑張れよー!!!)
とスマホに明らかな八つ当たりをしながら、がさがさとかばんをあさってもそこにモバイルバッテリーは入ってなかった。
 2時間程度で病院から帰ってくるつもりで家を出たため充電器も勿論無い。今のこの状況で生命線ともいえるスマホのバッテリーの残量が底をつこうとしていることに危機感を感じ気づけば、スマホを小刻みにふりふりしていた。振って溜まっていくのは万歩計の歩数くらいでスマホに対しては何の意味もなさないことは分かっていたが何かしていないと落ち着いていられなかった。
 病室の準備が整ったとの知らせを受けたのは、診察が終わってから1時間後のことであった。
 病棟まで上がる前に誘導してくださっている看護師さんに、スマホの充電器やお水、パン等必要なものを調達すべく、売店にも寄ってもらえるよう頼んだ。
 重要な充電器はケーブルとコンセントに差し込む部分を合わせて購入すると3500円を普通に超えていた。合計金額に思いを巡らせ
(うーわ!めっちゃ高いじゃん。充電器一つもしくはモバイルバッテリー一つでもかばんに入れていたら…。)
と後悔したのはそれから暫く経ってのことだった。
 病室に入ってからは、友人と電話をし持ってきてもらいたいものを伝え、看護師さんに冷蔵庫やシャワーなど病室や院内の設備の説明をしてもらった。
 ひなちゃんはその日高い熱に加え、度重なる検査や、病院への入院と大きく環境が変化したこともあったからだろうか、すこぶる機嫌が悪かった。
 先生や看護師さんが来るたびに号泣し、私が少しでもベッドから離れようものなら、アラームが作動するかのようにわめき散らしていた。
ひなちゃんがうとうとし始めたタイミングで、傍の椅子に座り夕食を食べようとした瞬間にむくっと起き上がったり、深く眠っている時を見計らって、コップやスプーンをベッド横の洗面台で洗おうと移動したら、大泣きし始めたりと、アルソックやセコムに負けるとも劣らない感度の良さであった。
 それからどうにか消灯時間になり私もやたら狭いベッドでできるだけ細長くなり、ひなちゃんと一緒に眠り、その日は終わった。
 一日を振り返る気力もなければ、次の日の予定を考える余裕も無かった。ただその一瞬一瞬を過ごすことで精一杯であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?