借りたくもない金を借りた!

 借金は多くの場合、必要に駆られ自らの意思でするものだろう。 では、私のように借りるつもりも無いまま気づけば金を借りていたという人は、どのぐらいいるのだろう。
 先日ATMでお金を下ろそうとキャッシュカードを入れた。そしてATM傍の受話器に耳を当て、音声ガイダンスに従い機械を操作した。無事お金が引き出されほっとしたのもつかの間、「残高は○○円です」といつものように口座残高が読み上げられぬまま音声は終了した。
 瞬間自分の失敗に気づいた。
 残高を読み上げないということは、そもそも残高の無い所からこの金を引き出したということだ。どうやらキャッシュカードと間違えて、クレジットカードを入れキャッシングで金を引き出したのだ。せっかく財布の中でカードの入れる位置を変えていたのに、どちらの場所にどのカードを入れたか、覚え間違えていたのだ。
 自分自身の失態を恥じ、曖昧な記憶に絶望した。
 バッハのトッカータとフーガニ短調が頭の中で再生された瞬間である。まったく、「チャラリーン!鼻から牛乳!」といった歌詞が付けられた曲でもあるようだが、牛乳どころではない。
 このまま何もしなければ、意図せず金を借りた上、来月の支払日には加算され続けた利子も含めて返さなければならない。それだけは避けたい。利息分で幾つのコアラのマーチを買えるだろうかと、手のひらをボロボロとこぼれ落ちていく好きなお菓子が頭によぎった。
 ことの顛末を後ろで待っていてくれていた夫に告げると、
「えー、カードの場所覚えときーよ。」
 と冷たくあきれられた。
 それから夫はコールセンターに電話をかけ、手続きすればクレジット会社の口座への振り込みで、すぐにキャッシング分を返せると教えてくれた。打ちひしがれた私にとって非常に温かい助言であった。
 そこからダッシュで家に帰り、電話をかけ、会社から振込先の書かれた案内メールをもらい、キャッシングした金額を振り込んだ。幸い借りたその日中の返金だったため、利子も付かずに済んだ。勿論電話代だけはかかったが、勉強代として消化した。
 そして、同じことを繰り返さぬよう、キャッシュカードとクレジットカードを改めて観察した。するとキャッシュカードには上部の名前や番号の書いてある浮き出た線のような部分が2本、クレジットカードにはそれが3本あることが分かった。カードをしまう位置に加え、カード自体の特徴も把握しておけば間違えずに済みそうだ。また、クレジットカードのキャッシング機能事態を無くすことも一つの手である。
 いずれにせよ、適切な場所から意図した金額を使おうとしているのか、それも含めこれからは「よーく考えよう」と思う。
 本当に「お金は大事だよ!」。

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