ひなちゃんの四方山話その4 『一歩踏み出したいところなのですが』

 ひなちゃん:ひなちゃんです。聞くところによると、冬は駅伝の季節なんですね。
年末は都大路で高校生が、年明けは箱根で大学生が頑張って走っているそうです。
 私も彼らには及びませんが、運動を始めました。足を振り上げたり、腰や太ももをくねくねと動かしたり。
ママにはヨガのシェープアップポーズみたいだと言われました。といってもまだ痩せたい年頃じゃないので、ダイエットといった目的はありません。
しいて言うなら今後のハイハイや2足歩行を見据えた筋肉の増強及び、体力の向上が目的です。
 そうそう、偶然左手と左足を大きく右向きに振り上げたところ突如、視界が90度右回転しました。何かと思ったら体全体が右を向いていたんです。
自分にもそんな動きができたんだって、もうびっくりしちゃいました!もしかして、これが世にいう「寝返り」の前兆なのでしょうか。
ただ横向きになったはいいもののそこから思ったように体を動かせなくて、手足をめちゃくちゃに振り回してしまいました。おそらく横向きの状態から上に上がった左足を右にもう1歩もっていけば体がもう90度回転し、寝返りができるはずです。
ただちょっと怖くて踏み出せないんですよ、その1歩が。やっぱり自分は赤ちゃんなんで、臆病なところがありまして。寝返っちゃったらどうなるのかなとか思ったら腰が引けて。腰が引けると背中側に転がって結局仰向けに戻りました。
今まで通り無機質な天井とお月様のようにぽっかり浮かぶ照明で視界がいっぱいになるばかりです。あー、無念。
寝返りってすごく大変なんですね。皆さん自然に寝返りができるんですよね。うらやましい限りです。
私にあと1歩踏み出す勇気をください。
 母:駅伝で走れるような足の速い方々は本当にすてきですね。私は、小学生や中学生の時の駅伝大会でいつも最後になり、半泣きでゴールしていました。切ない記憶です。
 さて、ひなちゃんも少しずつ体を動かし体制を変えられるようになってきましたね。
 あるとき、仰向けに寝かせていたはずのひなちゃんが横向きになり、手足をばたばたさせていてとても驚きました。
ただ、時々横向きの状態で動けなくなり、
「助けてー!」
と言わんばかりに
「ワーワー」
わめくようにもなりました。救助要請がかかる度、救出に向かうため、より忙しくなりました。
洗濯や料理といった家事の兼ね合いもありますので、忙しいときは寝返り練習を休憩してもいいんですよ。
 4か月で体重は生まれた時の2倍に、身長は10cm以上伸び、できることも増えました。これからも一歩ずつ踏みしめるようにしっかりと成長していってほしいものです。
 ひなちゃんがどんな人生を歩むのかとても楽しみです。
そうそう、人生のゴールや進路や進度は自分で決めてください。母は未だに人生のゴールを決め切れていませんし、理想のルートでも思った通りの速度で進めてもいません。
母はどちらかというと怠惰なタイプです。それゆえのんべんだらりとした平坦な道を選び、のんびり歩けるよう生きてきたつもりです。
それでもふと脇を見れば
「うーわ、いつの間にこんなところへ!怖すぎる!」
と言いたくなるような切り立った崖になっていたり、簡単に降りられそうな石段で盛大にこけたり、時折せかされるように走らされたり、そんな人生を生きています。
もちろん、道行く人に助けられたり、通りすがりの人と世間話をしたり、甘味処やハンバーガーショップで仲間と休んだりするような、楽しい瞬間もあります。
そんな計画通りのコースでもペースでも進んでいない母がひなちゃんの歩むコースや進むペースを決められるはずがありません。穏やかなカントリーサイドをスキップして行くような人生も魅力的ですし、にぎやかなダウンタウンをゆったり歩くような人生も楽しそうですね。
当たり前ではありますが、こうしていろんなストーリーを空想しても、人生に二度目ややり直しはありません。だからこそより良い選択をし、より良い人生にしようと真剣に迷う日が来ることもあるでしょう。
ただ、ひなちゃんの生きる社会はそれまで善であったことが突如悪に変わったり、その逆の現象が起こったりと、激しく変化し続けるうえ、不確実なことばかりでできています。
とはいっても進んでみなければどうなるか分かりません。そんなに心配しすぎないでまずは一歩足を踏み出してみてください。ひなちゃんが試行錯誤しながら歩む人生はきっと、オリジナリティー溢れた味わい深いすてきなものとなるはずです。
せっかくなので自分の好きなルートを心地よいペースで進んでいってほしいところです。

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