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母を想う気持ち

昨年のちょうど今頃に認知症の初期段階と診断された母の状態が、
新型コロナウィルスによる閉じこもり気味の生活によって、
このところ急激に悪化したような気がしています。

狭心症もあり、心臓の冠動脈にステントを入れているため、
なんとなくいつも心臓に手をやる母。
心臓に金属が入っているんだもの。そりゃ違和感あるよなあと思いつつ、
普段はそのことを忘れがちな父と私。

それに加えて、母は脊柱管狭窄症で右足の痺れもあり、
右肩は変形性肩関節症で常に痛みもあるという状態。
母は黙って耐えるというよりは、わりと周りに訴えるタイプで、
痛みが酷いと「誰もこの痛みをわかってくれない!」と言って、
一番近くにいる父に八つ当たりするのです。

そんな母を見ているのも、父を見ているのも不憫でならなくて、
せめて痛みを取り除く方法はないものか、といろいろ探して、
何カ所かの整体や整骨院にも連れて行ったりしました。
整形外科では手術しないと治らないと言われたのですが、
高齢の母に手術はちょっと無理かなと判断したこともあり、
それなら整体とか整骨院で症状が少しでも楽にならないかな、と考えたのです。

ネットで検索していて、全国的にたくさん営業を展開している整骨院を見つけて
口コミも良さそうなので、母が比較的歩ける日に連れて行きました。
対応もとても良くて、詳しく痛みのメカニズムなども説明してくださり、
保険も効くので良いお店だと思ったのですが、
背骨の歪みを矯正する施術は保険が効かず、別料金で2,200円とのこと。
それを一ヶ月6,600円で定額払いにすると、何度その施術をしても
月額6,600円でおさまるシステムがあると言われましたが、
その6,600円はなぜかクレジット払いか口座自動引き落としに
しないといけないとの説明でした。
母はクレジットカードは持っておらず、自分の口座番号も知らないとのことで、
その日は手続きをせずに帰りましたが、
帰ってきてからその6,600円を現金払いにできないのもおかしいよな、と
疑問に思い、父に相談。
更にネットでいろいろ調べると、定額の引き落とし手続きをしてから解約すると
解約金を支払わされたと書かれた口コミを見つけたので、
この商法はいかがなものか、と思い、その整骨院に行くのはやめた方が良いという
結論に至りました。せっかく良い施術をしていただけて、
母の痛みも軽減するのでは、と期待しただけに残念でしたが、しかたありません。
以前に母が通っていた別の整体も、枕を売りつけられたり、
変な機械を売りつけられたりしたので、純粋に良い施術だけを
誠実にしてくれるところはないのかしら・・と悲しくなりました。
誠実なところだと変な商法を取り入れなくてもお客さんは増えていくと思うのに・・

母の痛みを取ってあげたい。ただそれだけなのに、それがなかなか難しい。

「私が外に出て行くと、すぐに騙される」と母は落ち込んでしまって、
「そんなことないよ、世の中のシステムが悪いんだよ」って慰めても、
母はガックリきているようでした。
今回、良かれと思って連れて行った私も、
なんだか空回りしているようで本当に情けなくなりました。

自分の名前の漢字も一瞬忘れてしまって、
「あら、どうだったかしら、どうして自分の名前も書けないのかしら」
と言っていた母。母が字を忘れないように、まだ字が書けている間に、
「生まれてから今までを振り返って、なんでも印象に残っていることや、
出会った人のことなど、一冊のノートに書き留めていくことをしてみない?」と
勧めてみたら、「うん、そうするよ」と答えてくれました。

今でも鉛筆はナイフで削る母。
そういえば、私が子どもの頃、鉛筆削り器はもったいないくらいたくさん削れてしまって、
すぐに鉛筆が短くなるから、と言って、ナイフで私の鉛筆も削ってくれていたなあと
思い出しました。昔は鉛筆を削る用のナイフがあったけれど、
今はカッターナイフで削っています。

できていたことがだんだんできなくなるのは辛いけど、
鉛筆を削る母を見ながら、「まだ大丈夫、大丈夫だよね」と
心の中で自分に言い聞かせています。

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