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思わず泣いてしまった話

友人のお母様が亡くなられてちょうど1年の命日。

お母様の命日にひとりでいると悲しくないかな、と思ってウォーキングに誘った。

その時に、その友人から聞いた話で泣けてしまった。

ここからはその友人の話。

「父と母は大恋愛の末に結婚したの。父も母も結婚前にお互いに宛てて書いた手紙をずっと大切に持っていてね。母が父に宛てた手紙の中にこんなエピソードが書かれていたの。デートのあとに父が母を電車で最寄りの駅まで送っていったらしくてね。駅で別れたんだけど、離れがたかったのか、母は帰って行く父が乗った電車に思わず飛び乗ってしまったらしくて、父のところには行かず隣の車両から父の姿を見つめていたんだって。そのことをあとで父への手紙に書いたらしく、『実は隣の車両からずっとあなたのことを見つめていました』という文章が手紙にあったの」

ああ、きっとお母様はお父様とずっと一緒にいたくて、別れたあと思わずお父様と同じ電車にまた乗ってしまったけれど、なんとなく恥ずかしくてお父様の目の前に現れることをせず、隣の車両から愛しい人を見つめていたんだな、と思うと、乙女心がとてもせつなく伝わってきた。きっと姿を見せてしまったら、またお父様はお母様を送ってくれることになっただろうし、エンドレスに電車で行ったり来たりしていたかもしれないな、とも思った。そんなお二人の恋のエピソードを知って、心が温かくなった。

友人が言うには、お母様が昨年亡くなられた時、お父様がお母様に宛てて書いた手紙を全部お棺に一緒に入れて送り出したらしい。そして、お父様が亡くなる時には、自分のお棺にお母様からの手紙を全部入れてほしいと言われているそうだ。

この話を聞いて、私は思わず涙ぐんでしまった。

なんて素敵な夫婦なんだろう。

ご両親の若かりし頃の恋愛のエピソードを、娘である友人が手紙から知る・・・

そしてその手紙をお父様が亡くなられたらお棺に一緒に入れるつもりにしている。

ご両親は本当に最後まで仲良く、信頼関係で結ばれていたとのこと。

まだ携帯電話もなかった時代は、恋人たちの連絡の手段は手紙か電話しかなかった。

恋人同士で手書きの手紙を送り合うという楽しみは、今となってはなんだかとても特別なことに思えて、そのエピソードがよけいに光っているように思えた。

そんなエピソードを聞いたお母様の命日だった。




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