ミュージシャン④宇多田ヒカル~27 「花束を君に」

この曲が宇多田ヒカルさん作品の中で一番好き、という方も多いと思います。

自分も好きです(笑)。

コード進行はシンプルですが、これまでの宇多田ヒカルさんの作品と比べると、和声が機能的に働いている部分が多いと思います。

ドミナントモーションがこれだけ使われることは少ないでしょう。

「人間活動」の後、というよりは、この曲が母親に対して書かれていることが大きいんだと思います。

やはりそう言った感情を表すのには、和声を機能的に使った方が効果的だからです。

多分本人は自覚的にやっている訳ではないのでしょうが。

Bメロが無い構成のシンプルさも表現上はプラスに働いているでしょう。

イントロ無し、歌だけから入り、徐々にピアノ、ストリングスと入ってくる、これも効果的ですよね。

オーソドックスなアレンジなんだけれども、どこでどの楽器を入れるかが上手く計算されている、素晴らしいアレンジです。

この曲自体が伝えたいことが明確であるために、余分なところは捨て、シンプルな構造にしている。

こういう曲って怖い部分もあるんですよ。曲の良し悪しが明確になってしまうから。

化粧が濃ければ化粧の力で何とかなっても、こういう曲だとごまかしが効かない、宇多田ヒカルさんならでは、というより明らかにこれまでの宇多田ヒカルさんより前に進んでいる、素晴らしいの一言に尽きます。

それと、「息」までもオケのパートにしてしまうセンスがまた見事です。宇多田ヒカルさんの場合、「声」を作品の一つのパートにすることも多いのですが、これは本当に上手い使い方だと思います。

歌詞の暗喩も素晴らしいですよね。これも「何を伝えたいか」がしっかりしているから、直接的な表現が無くても焦点がぼけないんですよね。

でもこれって某国営放送局の朝の連続テレビ小説の主題歌ですよね。

朝聴く曲じゃないですよね。

もっとしんみりと聴きたい作品です。



ほぼ書きたいことを書いていて、読んでいただけることも期待していませんが、もし波長が合えばサポートいただけると嬉しいです!。