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#190 ガンバ大阪絶好調!今季の好調を5つのポイントから考える


※全文無料でお読みいただけます。
※記事自体は第17節湘南戦〜天皇杯福島戦の間に書いたものですので、福島戦と第18節柏戦の結果と内容は含んでおりません。


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さてさて、ガンバ大阪、3位です。



ガンバ大阪、3位です。



去年は下から3番目だったのに。
…いやね、言ってもまだJ1は半分にも到達していない訳ですから、シーズンが終わった時に「前半戦はなんだったのか」と嘆かずにはいられない結末になる可能性は当然ありますよ。当然。
それでもね、やっぱりね、なんでしょうね…記憶にないんですよ。近年。ここまで心穏やかな熱狂と共にシーズン中盤を迎えた事が。2020年は最終的には2位でしたけど、情緒としてはジェットコースターみたいな中で2位に着地したようなシーズンでしたし(それはそれですごい)。

…で、そんな充実したシーズンでありながら、何気に私はここ数試合のガンバのマッチレビューを書けておりませんでして。さっき確認したら最後に書いたのが第13節名古屋戦でした。なんとそここからは4戦連続書けておりません。その間3勝1分。もしやワイ、書かん方が成績上がる……??



…冗談はさておき。今回はマッチレビューまあまあサボっていた代わりじゃないですけど、今季好調のガンバの2024年は果たして何が良いのか。何が良くなったのかを5つのポイントから考えていきたいと思います。


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①中谷加入と焦れないDFライン

・中谷進之介とかいうスーパー補強の効果


今季のガンバの大きなポイントは「焦れなくなった」というところでしょう。それは攻撃に於いてもそうですが、特に守備ではそれを感じる場面が多いです。
振り返ってみれば……どうしても展開がオープンになる試合終了間際を除けば、相手FWがCBの裏を完全にとったシーン、或いはGK一森純と1対1になるような場面ってあんまり記憶にないんですよね。例えば第9節浦和戦なんかは長い時間押し込まれ続ける展開になりましたけど、「崩された!」と思うようなシーンはスタッツほどは無かった。浦和戦に限らず、今年「あっぶねぇ!」って思ったシーンってミドルシュートやセットプレー絡みくらいで、ギタギタにされたような場面ってあんまり思い浮かばない。今季のガンバはチームとしてゾーンディフェンスに取り組んでいますが、守備陣は相手が押し込んできても焦れないんですよね。引く時はちゃんと引く。「確実に取れる場面」か「50/50だけど取れたら一気に大チャンスになる場面」以外は我慢するといった守備意識を全員が共通して持っている。もちろん毎試合押し込む展開で戦えたらベストですけど、前述の浦和戦や第17節湘南戦のように「押し込まれたけど崩されたって感じしねえなあ」みたいな肌感覚を持てているのは守備が機能している証拠でしょう。


その上で大きいのが、言うまでもないですが中谷進之介の存在、中谷進之介の獲得です。
このままの調子でシーズンが終われば、中谷の獲得はガンバの歴史上でもトップクラスの補強だったと評価されるべき。間違いない。

中谷の獲得で一番大きかったのは何かと考えたら、それは守備陣にとって明確な軸と基準がハッキリと出来た事であり、それによってコンビを組む相方CBのストロングポイントを最大限引き出せるようになった事だと考えています。
例えば昨季は役割としては今季の中谷と似たようなところがあった昌子源の退団もあって三浦弦太がそういう役割をやろうとしていたように映る場面があったのですが、彼の場合はやはりその恵まれたフィジカルがあるので、相手に屈強なFWがいる場合は三浦が当たる事がベターになる訳です。じゃあ三浦が相手に当たった時に、守備陣は誰を軸にして動けばいいのか?誰を基準にラインを決めればいいのか?という側面があったな…と。
三浦にしても福岡将太にしてもそういう仕事が出来ないDFではありませんが、同時にそれを自身の最大のストロングポイントとしている2人ではない。一方で中谷はそういう「DFリーダー業」なるものを最大のストロングポイントとしている選手ですから、相方のCBもSBにしても、守備時のラインの高さや距離感は中谷を基準に揃えていく事ができる。サッカーに限らず、ビジネスにしても旅行計画でも「一つが決まれば後の事はぽんぽんと決まる」とはよく言いますが、今のガンバは中谷がその一つ目になっているんですね。これは特にゾーンディフェンスで戦おうとしているガンバにとって相当な助けでした。今季に関してはチームとしてこういう守備をしっかりやろうという取り組みが目に見えているところも大きな要因ですが、目指す場所をしっかり持っている上で、その目指す場所にピンが立っているかどうかの違いは大きいです。

・軸を定めてバフをかける

加えて中谷は「時間を稼ぐ守備」がめちゃくちゃ上手いんですよ。だから他のDFはチャレンジして万が一抜かれても、或いはパスミスをやらかしたとしても「戻るだけの時間は中谷が稼いでくれる」という安心感はあると思います。その絶対的な安心感があるので、例えば対人に強い三浦ならガンバの攻撃が弾かれてルーズボールになったとして「自分が思い切って前に出て取れれび攻撃を継続できる」「でも翻されればカウンターの大ピンチだからデュエルは諦めて構える」という2択のシチュエーションになった時に前者を選べる。福岡にしても、例えばSBのところでボールが詰まった時の出口になれるように一時的に持ち場を離れるだとか、ボールを持った時に自分でボールを持ち出してみるだとか、そういうちょっとした「冒険」が中谷という存在の安心を覚えることでリスクではなく確実性の高いプレーになってしまうんですよね。つまるところ、個人としての守備能力はもちろん、中谷進之介というプレーヤーは相方のCBにもバフをかける事ができる…中谷と組んだ事で三浦や福岡が自分のストロングポイントを迷いなく活かせる舞台が出来ているなあと。

ありがてえ、ありがてえよ…




ただ、今季は中谷の存在があまりにも大きいがゆえに「もし中谷が怪我でもしたらこの黄金比が一気に瓦解してしまうのでは…?」という不安点がある事は確かです。
中谷が今季唯一出場しなかったルヴァン杯の琉球戦を見てもそうですし(メンバー自体がターンオーバー色強めだったので直接の比較はできませんが…)、いま成立しているゾーンディフェンスが本当にチームに浸透しているものなのか、或いは上述したように中谷を基準点に成立させているものなのかは正直中谷がいなくなった時じゃないとわからない部分はある。中谷は名古屋時代からリーグでも屈指のタフネスプレーヤーという要素を持っているとはいえ、つい最近に三浦の長期離脱で我々が思い知ったように「誰がいつどうなるか」なんて確たる事など誰も言えない訳で。
ただゾーンディフェンス自体はクラブとして取り組んでいる事ですから、最初は中谷を見て動いていた選手が中谷がいなくてもいつの間にか勝手に動けるようになっている事もまた自然な成り行きの一つではありますし、同時に「中谷がいないなら俺が基準点になる」という選手が出てこなければならない。中谷がいる利益はピッチ上の現象のみならず、中谷がいる間にどんな布石を打てるかという部分もあるでしょうし。



②ハイプレスではない前線守備


・前進守備はハイプレスにあらず


昨季のチームは強度不足がずっと指摘されていて、ポヤトス監督も昨季の終了時から、まるで内外に言い聞かせる意図もあるかのように「インテンシティー(強度)」というフレーズを強調していたように感じました。おそらくポヤトス監督の中でも昨季は戦術というよりもコンセプトの意識付けが先にあり、今季はそれをより実践的な形にしていくことを目指す…その為には去年の強度感では絶対に成立しないという印象があります。
その点で言えば今季のガンバは常に強度高く守備ができていますし、そもそもそうじゃないと守備の面で現在の数字は出ないでしょう。倉田秋や山田康太は元々そういうところに長けた選手というか、ハードワーカー的な印象の強い選手ではあひましたが、そういうイメージがそこまで強い訳ではなかった坂本一彩、そして10年前はそういうところから最も遠いところにいるとすら揶揄された宇佐美貴史もしっかりとそのタスクをやってくれている。何よりウェルトンさんごめんなさい、獲得報道が出た時は「攻撃には期待して守備には目を瞑るタイプ」と勝手に思っていました。めっちゃやってくれてる……。中谷の加入、三浦や福岡が更にストロングポイントを伸ばしたDFラインそのものの向上が堅守の最大要素とはいえ、この数字は今季のガンバの前線守備の頑張りと効果を抜きにしては語れません。

宇佐美と坂本が同時に走り出す光景
ユースのアニキと舎弟感があって好きです


しかし「強度の高さ」「前線からの守備」がクローズアップされるチームと言えば、リバプールに代表されるようにハイプレス・ハイラインをやり抜くチームという印象が強いじゃないですか。
それが今季のガンバは前線からしっかりとプレスをかけるけれど、それが決してハイプレスではないんですよね。それこそ大阪ダービーでの宇佐美のゴールはそのわかりやすい事例した。

・それこそが"再現性のある攻撃"



文字で表せば「毎熊の鳥海へのパスがズレたところを宇佐美がカットしてゴールまで持ち込んだ」というシーンで、一見すればセレッソのパスミスを見逃さなかった→宇佐美の理不尽シュートというシンプルな流れではあるんですご、今季のガンバの前線守備の特徴はこのゴールに実によく表れていて、ボールホルダーにそこまで積極的に行く訳ではないんですけど、その代わりに複数人の選手が連動して明確にパスコースを切っているんですよね。
この場面であれば、最初に毎熊ないしは鳥海がボールを持った時点で坂本がボランチへのパスコースを宇佐美は鳥海より左にいる舩木に出すルートをしっかり切って消しているんですよね。ボールホルダーにはそこまで強く行かずに、外堀を埋めて毎熊と鳥海の間でしかパス交換が出来ない状況を作っていく。言い換えれば毎熊にとっては鳥海、鳥海にとっては毎熊しか選択肢がない、相手の選択肢が一つしかない状況が発生するようにボールホルダーにプレスに行くんですよね。そうすれば後は、その唯一の選択肢のところでインターセプトしてしまえばいい。選択肢が一つになった事が確認できたタイミングで、この場面で言えばダワンが押し上げてきたタイミングで坂本は鳥海に「どうせ毎熊にしか出せねえんだろ!?」的なノリでプレスに行き、そして倉田も「どうせ鳥海にしか出すしかねえんだろ!?」みたいな圧をかけるようなプレスに行く。そして毎熊から鳥海へのパスがズレたところを宇佐美が掻っ攫った…と。
…まぁ、この場面の事はこの試合のマッチレビューにクソ長く書いたんでそっちを見てもらいたいんですが(参照)、今季のガンバが素晴らしいのは、この大阪ダービーの宇佐美のゴールのような場面をコンスタントに作れている事。第17節湘南戦の宇佐美の先制点なんかもモロそれでしたよね。良い位置でカットさえしてしまえば、湘南戦のゴールのように細かいパスを小気味よく繋いでいくスキルはこのクラブの選手が伝統的に持ち合わせているものとも言えますし。



ガンバの試合を継続してではなくこの試合をたまたま単発でご覧になられた方にとっては、このゴールは「湘南のミスを見逃さなかったガンバ」という印象の方が強いかもしれませんが、今季のガンバに関しては「この守備自体が今年のガンバの"再現性のある攻撃"やぞ」というところは一言添えておきたい次第でございます。


③ビルドアップの出口確保


・Wボランチに変更した効果

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