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#147 小野瀬康介




全くの予想外…ではなかった。
不謹慎だが誰が契約満了になるかの予想でもするなら、大穴みたいなポジションにいるとは思っていた。
だから全くの予想外だったかと言えばそうではない。ただ理屈どうこうじゃなくて、精神的にキてる。そろそろパトリックへの感謝の内容のNoteでも書こうと思っていた。二川孝広引退の報があったから、それも書かなきゃって思っていた。まだ感情が追いついてこない。小野瀬康介のInstagramでボロ泣きする奥野耕平の姿を見て「わかるよ奥野…」って感情だけが湧いてくる。




あの時、小野瀬が所属していたレノファ山口が出したリリースは今も覚えている。小野瀬のみならず、社長と監督も連名でコメントを出したそのリリースには「ガンバ大阪という歴史あるクラブに行くような選手がウチのクラブから出てきた事が嬉しい」というようなコメントが綴られていた。これまでガンバには多くの選手が加入して、その度に色んなリリースが出されてきたが、少なくとも自分が応援するクラブに移籍する選手のリリースであれ以上に"意味の重さ"を感じるコメントはそうはない。



そして……2018年7月、宮本恒靖が監督に就任し、松波正信が強化部長に就任した。
監督に就任したツネ様が、松波さんに最初にリクエストしたのが当時J2でプレーしていた小野瀬の獲得だったという。いわば、現場と強化のトップに立ったこのクラブを象徴するレジェンド2人の初仕事が小野瀬康介の獲得だった。
終わってみれば、監督としての宮本恒靖が最も愛したのは小野瀬だった。サッカー的な意味で"宮本恒靖の恋人"と表現してもいいほど。2018年の劇的残留と9連勝は今野泰幸の復帰とファン・ウィジョのブースト、そして右SHを小野瀬で固めたところから始まったし、2019年の小野瀬康介はやはり代表に呼ばれるべきだったと今でも未練に感じている。あそこまで点を取れる右WBはロマンでしかなかった。宮本ガンバの3バックシステムは2019年夏の選手入れ替えもあってメンバーの変遷はあったが、その全ては小野瀬の存在ありきで構築されたシステムと戦い方だったとすら思う。メンバーは変わりながらもハイプレスとテンポの良いパスワークとショートカウンターを極めようと志した2019年の戦い方も、2020年に目指したハイプレスも、2021年にやりそびれた4-1-2-3も……ツネ様がガンバでやろうとした事の全ては小野瀬ありきだった。
個人的には、私は宮本ガンバには割と肯定的な意見と感覚でいる。それだけにやっぱり、2019年の形のその先を見たい気持ちはあった。その未練は今、小野瀬が去る報に包まれて一層強く感じている。


そして、大ブレイクを果たした2019年末に舞い込んだ横浜F・マリノスへの移籍の話を、元々関東の人間である小野瀬にとって、第3者的に見れば正直美味しいところしかない移籍話を、熟考の末に「(移籍で)得るものより、失うものの方が多いと思った」「今までは自分の成長の為に移籍してきたけど、今回は自分より誰かの為に頑張りたいと思った」と断ったあの瞬間、小野瀬はこのクラブの絶対的な主力から英雄に昇華したし、あの決断は尊いという言葉すら収まらないほどの感情をガンバファンに与えてくれた。

2020年以降は怪我やコンディションの問題も増えて、特に2021年はチーム事情もあって便利屋的な使い方になってしまった事もあった。
だが、かつて横浜FCにいた頃、当時の同僚だった元ガンバの寺田紳一に「僕なんかがガンバに行ける訳ないんでチン君(寺田)のガンバユニください」とユニフォームをせしめた彼が、"TERADA"ではなく"ONOSE"の名を冠した青黒のユニフォームで全てを捧げる姿は、ある意味で外様始まりだからこその愛と忠誠を感じるような献身だった。寺田にガンバユニをせびった小野瀬康介は、気がつけばそのユニフォームの英雄になっていた。
ツンツン感のあるキャラクターながらも色んな選手からのインタビューや取材記事で漏れてくる意外な熱さと友情エピソードも魅力で、インスタに載せられていた奥野の号泣には彼のガンバで歩んだ軌跡が全て詰まっていたようにも見える。




寂しさを語り始めればキリがない。
クラブにはクラブなりの考えと理屈があるのだろう。だからそれをこのNoteでとやかく言うつもりは今はない。
だからこそ今は添えるべき言葉に感謝しかない。
大好きでした。これからも大好きです。

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