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#146 2022.11.13、朝。



運命を分ける瞬間は誰かにとって然るべき時にその肩に降り掛かります。

ちょうど10年前……大木武という稀代の名将に率いられた京都サンガFCというチームが織りなすサッカーは、完成度とクオリティとしては非常に高いレベルにありました。あのチームはJ1という舞台に出しても決して恥ずかしいチームじゃなかった……それは今でもそう思っています。あのチームがJ1で戦うところを見てみたかった…そう思うサンガファンは、今でも多くいる事でしょう。
しかしその思いは叶わなかった。「J1に行ってみたら全然ダメだった」と言う結果を含めて答えを知る事も出来なかった。夢は結果ではなく未練にしかなれなかった。結果としてサンガは、J1に値しないとされてしまった……。それはなぜか、それはサンガの肩に何度も降りかかった、運命を分ける瞬間をことごとく外したからです。その瞬間を逃し続けたサンガは、少なくともその分かれ道に手をかけられていた時代を過ぎ、12年にも及ぶ長く深刻な季節へと突っ込んでしまった……それが運命を逃し続けた者に与えられた結末でした。

しかし今年はJ1という舞台での戦いを許された。それは他でもなく、2021年に訪れた運命を分ける瞬間を、しっかりとその手に収めてきたからです。J1という舞台にはそれを繰り返す事でしか辿り着けないし、それを繰り返す事でしかJ1に残れない。そのタイミングを手にしたガンバや福岡はJ1に残り、そのタイミングを逃した清水や磐田はJ2に落ちた。そしてサンガもいくつかのタイミングが滑り落ちた。それでもサンガはまだ最後の岐路に立つ権利を得ました。たとえ今が木の枝を掴んでいるに過ぎない状態だったとしても、それでもサンガはまだJ1にぶら下がっている。そのタイミングが失われるいつかサンガが見た悠久の苦しみの時代と比べれば、ラストチャンスが残されたこの状況もまた、このクラブの12年ぶりの冒険に沿うファクターなのでしょう。

運命を分けるこの瞬間はクラブの、そして個々の運命をダイレクトに左右にします。12年ぶりのJ1を戦い抜いた末にサンガがたどり着いた舞台はその岐路なんです。
もし仮にサンガが今年降格したとしても、そもそも12年ぶりのJ1ですし、ここまで粘ったと捉えれば、一つの冒険として必ずしも失敗とは言えないと思います。しかし、今年の冒険が思い出になるか、これから先の積み上げになるのかは今日に全てがかかっています。12年間、戦うことさえ出来なかった対戦相手との戦いを肌で感じ、いつかああいう立場のクラブになりたいという思いも募った事でしょう。
この冒険にまだ句点を打つわけにはいかない。「SAdventure」と銘打った2022年の冒険を読点にする為に、全てを担保にしてでも勝利を掴み取らねばなりません。

サンガスタジアム、現地行きます。
その運命の瞬間を、しかとこの目で見届けてきます。

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