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#189 どうしたガンバ大阪!?今季好調の要因を5つのポイントで考察する回【Note編/宇佐美ゼロトップ編】


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え、ほんとに3位やん(3度見)

どーもこんばんは

さてさて、ガンバ大阪、3位です。
ガンバ大阪、3位です。
去年は下から3番目だったのに。

…いやね、言ってもまだJ1は半分にも到達していない訳ですから、シーズンが終わった時に「前半戦はなんだったのか」と嘆かずにはいられない結末になる可能性は当然ありますよ。それでもね、やっぱりね、なんでしょうね…記憶にないんですよ。近年。ここまで心穏やかな熱狂と共にシーズン中盤を迎えた事が。2020年は最終的には2位でしたけど、情緒としてはジェットコースターみたいな中で2位に着地したようなシーズンでしたし(それはそれですごい)。
という訳で今回は前回と同様に今季好調のガンバの2024年は果たして何が良いのか。何が良くなったのかを考えていきたいと思います。今回は今季の宇佐美貴史の起用法とそのメリットについて。



【おしながき】
①中谷加入と焦れないDFライン(前編)
②ハイプレスではない前線守備(前編)
③ビルドアップの出口確保(後編)
④加速と減速の状況判断(後編)
⑤ゼロトップ宇佐美の効果


オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。



今季の宇佐美貴史さん、絶好調です。
本当にありがとうございます。



まあもう、難しいことを抜きにして、ね。
今季の復活ぶりがとにかく嬉しいんですよ。
今季のプレーぶりがとにかく楽しいんですよ。
結局のところ大好きなんですよ。
気分はドリカムですわ、もう。



で、ポヤトス体制になってからの宇佐美の起用位置はと言うと……結果的に去年は結構色んなポジションでプレーしていました。
開幕当初はインサイドハーフ(インテリオール)として起用されましたが、宇佐美のコンディション不良・山本悠樹の台頭・チームの好調が重なってからは、途中出場メインになった宇佐美が先発起用される際にはセンターフォワード、ないしは左WGでプレーする機会が多くなっていました。



対して今季は、これは前編後編で延々と書きましたがシステム自体を4-1-2-3から4-2-3-1に変更。開幕前は宇佐美はトップ下として山田康太との併用が予想されていましたが、いざシーズンが始まると表記上はトップ下に入った坂本一彩や山田康太と縦関係になるワントップ、そして試合中の動きとしてはゼロトップとしてプレーしています。
一応先に言っておくと……宇佐美のゼロトップはポヤトス監督も選択肢の一つとして考えていたとは思いますが、開幕前の時点でそれがファーストチョイスだったか?と言えばおそらくそうではないような気はします。開幕戦は坂本がワントップ起用されて宇佐美がベンチスタート。そして宇佐美が最前線に入ってからはその坂本がトップ下に入っている訳で、開幕前からのファーストチョイスというよりは、オプションとして考えていたものが想像以上に良かったからそのままメインに据えた…という方が実情としては近いのかな、というところだけはあらかじめ。


全体的に好調なガンバの中でも、宇佐美のゼロトップ起用についてはガンバファンの中で賛否が分かれているところはあると思います。
スペイン人監督のチームと言ってイメージしやすいポジショナルプレーの実践を強烈に求める人の中にはそもそも宇佐美がフリーマン的になっていることを快く思っていない人もいるでしょうが、宇佐美ゼロトップの反対意見として多く見られるのは「後ろに降りすぎ/中盤まで降りてこないでほしい」「結局チームで一番シュート上手いんだから前に張ってフィニッシャーに専念してほしい」という意見が多く、ここに関してはガンバが攻めながらも得点数はさほど多くないところであったり、或いは「宇佐美降りすぎ問題」自体が2度目のガンバ復帰を果たした2019年以降ずっと言われていた事ではありましたから、そういうところが否定意見に繋がっている側面はあるのかなと。

宇佐美降りすぎ問題に関しては私自身も、2020〜2021年のチームで確かに同じことを思っていました。
ただ現在のポヤトス体制でのそれに関しては、個人的には去年の中盤も含めて肯定的に見ているんですよね。宇佐美降りすぎ問題が、問題じゃなくてちゃんと上手く回るようなシステムに落とし込めているように感じるというか。



去年もそういうブログをいくつか書いたんですけど、これは完全に推測であってソースも何も全く無いんですが……ポヤトス監督って、宇佐美の卓越したパスセンスと、確かすぎるキックの精度に裏付けされたその技術をすごく高く評価していると思うんですよね。それは見ようによっては、フィニッシャーとしてのセンスやドリブラーとしての突破力よりもプライオリティーを置いているように見えるというか。
前回書いたように、ポヤトス監督が口酸っぱく言っていることは「スペースを作る事」「スペースを見つける事」「スペースを使う事」の3つであって、このうち「スペースを使う事」は「スペースに走る事」「スペースにボールを出す事」の更に2つに分けられる。ポヤトス監督のサッカーで最も大事なのはポゼッションを高めることでもビルドアップを徹底することでもなくこのスペース三原則であり、ポゼッションとビルドアップはこの三原則を遂行する為のツールでしか無い…と。

このスペースを重視して物事を語る時、多くの人は重視するべきキャラクターとして「スペースを作る選手」を想起すると思うんです。つまりは持ち場をしっかりと守るポジショニングを取れる選手であったり、豊富な運動量で何度もアクションを起こせる労を惜しまない選手であったり。
ですが、ウェルトンのようにそのままドリブルで突破していけちゃう選手であればともかく、基本的にスペースを作るならばそのスペースを見つけて、そこにパスを通せる選手が必要になる訳です。そう考えると宇佐美って、スペースを作るタイプの選手ではなくともそういうスペースを見つけてそこにパスを蹴れる能力がめちゃくちゃ高い。第17節湘南戦で山下のPK獲得を誘発したパスのようなファンタジックなものもそうですが、自陣からカウンターパスのような低弾道のロングスルーパスも蹴れる。ポゼッション率を高めるよりもスペースをどう作り、見つけ、そして使うかを重視しているポヤトス監督にとって、低い位置からでもそういう一本を蹴れてしまう宇佐美のパスセンスはどうにかして組み込みたいと思うんですよ。それが昨年の中盤起用にも大きな影響を与えていたとすら想像していますし。


ただ、上で書いたようなことを前提としても、これまでが「宇佐美降りたら誰もおらんやんかい!!」という現象がちょいちょいあったように、スペースだなんだ、パスセンスがどうだと言ったところで前に誰かがいなければ攻撃は成り立たない。そこで今季のガンバは、スタート位置と守備時は宇佐美が一番前に立つけれど、ボールを保持した時にはトップ下の坂本や山田が宇佐美と入れ替わる、或いは宇佐美を中央でオーバーラップしていくような動きを起こす。それだけでなく、宇佐美と2列目の3人がそのまま入れ替わる形で4-2-3-1が4-2-1-3に変化するような攻撃体制を明確にするようになりました。要は今のガンバはゼロトップかつ擬似3トップみたいなものでしょうか。
これにより坂本や山田は宇佐美を追い越す形になる訳で前に抜けやすくなっていきますし、両WGに関してはウェルトン以外はあまりメンバーが固定されていないのでそれぞれのパターンもありますが、宇佐美をスイッチを入れるタイミングとした上で3人がアクションを入れていくという前提を定着させた事でチーム内でアクションを起こすタイミングは明確になったように思います。前述したような宇佐美の中距離スルーパスはチーム自体が4-1-2-3から4-2-3-1にシステムを変えたことで、4-1-2-3時代にあった2列目中央のスペースに宇佐美自身が入るようになった事で見られる機会は減りましたが、その分第17節湘南戦の宇佐美→山下のパスのように、アタッキングサードで自分を追い越すように走るアタッカー陣に向かって確度の高いアイデアを実践しやすくなった。宇佐美の前を追い越すアタッカーに相手DFが気を取られたことで宇佐美がミドルを狙える…という場面も出てきますし、最前線の宇佐美と2列目の3人がクロスオーバーしていくようなゼロトップシステムは、前線でいくつかのコンビネーションを発揮できるようなシチュエーションを増加させ、そこにウェルトンのような独力で行ける選手もいる事で格段に前線での選択肢を増やせるようになった。これは前回の内容と同じく「多くの選択肢を持ちながら適切な判断を下していく事」をビルドアップの段階からファイナルサードに至るまでチームのテーマとして持っている今季のガンバにとってすごく大きな事だなと。
特にスイッチという意味では守備は前回書いたように中谷、攻撃では宇佐美を基準にチームが動き出している。ここがちょっと替えがきかなくなり過ぎているという不安は多少あれども、一つ決まれば順々で全てが決まっていくように、中谷と宇佐美が攻守でそれぞれセクションリーダーのように機能しているというところもポイントですね。


今回はガンバ好調の要因…みたいなブログを3回に分けて書いたんですけど、読み返せば「前回書いたように」みたいなフレーズが頻発するんですよ。要は前編から後編、そしてこのNote編……いずれも根底にあるものは共通していたりするんですよね。
去年からポヤトス監督がずっと言っていたスペースを作る事、見つける事、使う事に対して、自分達でしっかりとビルドアップし、焦れずに常に確立の高い選択肢を選ぶ状況判断をし続けていく為に、まずはしっかりと相手と味方の状況を把握しておく。そうする事で相手のズレにも気付くし、相手に歪みを生じさせる為のアクションの起こし方もわかってくる。その意識を高く持つ事によって、逆にカウンターだって狙いやすくなる。一方で守備はそういう状況にしない為に統率を乱さない……「焦れない」「周りをよく把握する」「確立の高い判断する」「ギャンブルも選択肢として持ちつつ、実行する際には根拠を持つ」という言葉にすればシンプルなことを今季のガンバは徹底してやっていますし、その意識は去年からずっとガンバは持ち続けていた。去年は意識先行になった部分もあって、感覚やピッチ内で起こる事象とのギャップに苦しんだところがありましたが、そこはポヤトス監督も柔軟に対応した事で今季はそのギャップが埋まった。今のガンバは黄金比かどうかはわかりませんが、意識と感覚が高水準で釣り合っているチームになっているんじゃないかなと思います。

今の段階で「ACLだ!」「優勝だ!」とはあまり言いたくはありません。
あくまで今季のガンバは近年の状況も加味した上で7位以上を目標にしていますし、サッカーとは相手があるものである以上、自分達がやるべきことをやり切ったら結果がついてくるとは限らない。やるべき事をやり切っても相手がそれを上回ってくる事が平然とあるのがフットボールですから、この好調に酔って早急に目標を上方修正するのではなく、まずは最初に掲げたハードルをしっかり超えていってほしいと思っています。
しかしながら、昨年苦しみながらも育み続けた意識がチームの感覚として浸透するようになり、逆に元々有していた感覚や文脈も活きてくるような構造をポヤトス監督も考えてくれた。意識を醸成し、リアクションからアクションを起こせるクラブに矯正する作業を踏んだ昨季からの今季というところで見ると、ポヤトスガンバのチームビルディングはすごく良いプロセスを踏めているんです。ポヤトス監督も試行錯誤は色々ありましたが、ここにきて良い配分を見つけ出した。世間は「ポヤトスがクビにならないように譲歩した」とか「一部の選手が戦術無視でやってる」と仰る方もいますが、今のガンバは決してそんなネガティブな歩み寄り方で成立した妥協作ではなく、選手はポヤトスの矜持と知見に、ポヤトスは選手とクラブの感覚に対して、妥協ではなく好意的に、そしてポジティブに向き合って生まれた作品だと信じるに足るだけのものを見せてくれていると感じています。

福岡将太曰く、ポヤトス監督は戦術を授ける事を「アイデアを与えている」と表現しているそうですが、その言葉自体がポヤトス監督の矜持なんだろうなと思いますし、それはヨハン・クライフとそのチームに憧れた彼が、ユースチームとはいえレアル・マドリードというクラブで指導者として働いていたそのキャリアを踏まえて育まれたものでもあるのかな……なんて勝手に妄想しながら昨年からのガンバとの歩みを振り返ると、なかなかに味わい深いものがあるなと。果たして後半戦はどうなっていく事やら。


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