平成最後の強盗バトル

 2019年4月30日。おれたちは現金を満載したバンに乗り、国道を飛ばしていた。
 後席の仲間たちが大量の万札の中で叫びまくる。
「『平成最後の大強盗』万歳!」

 世の銀行強盗に真っ当な動機なんてものがあるかは不明だが、おれたちの動機は不純を極めていた。どうせ食い詰めた身、死ぬより前にデカいことをしたい。言い合う酒の席で「平成最後の大強盗」が最高の響きだと言い出したのは誰だったか。

 突然、助手席の女が「えっ」と叫び、車内の注目が集まった。
「宝くじでも当たったかい?」
 後席から茶化す声が飛んだが、女は深刻な表情を崩さない。
「ちょっとこれ見てくださいよ」
「よそ見運転になっちまう」
「強盗した身で道交法気にしてる場合ですか、ホラ」

 突きつけられたスマホの画面には銀行強盗を報じるニュース。おれたちの話かと思ったが、場所が違う。規模もでかい。何より時間は数分前。
 まさか。

「『平成最後の大強盗』を盗られた……!?」


【続く】

(続きました)

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