あお

活字を追う時間、そして自分の言葉を組み立てていく時間は至福であると、最近思います。

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最近の記事

『この村にとどまる』~娘のゆくえについて~

※ネタバレに繋がるのでご容赦ください 前回、『この村にとどまる』という本の感想をアップしたが、そこに書ききれないことがあった。 主人公トリーナの娘、マリカの失踪についてだ。 自分はこの本で幾度となく、マリカという人物に思いを馳せた。 彼女はなぜ村を出ていったのか、そしてその後、どこでどうなったのか。 このことまで前回の記事の内容とまとめて書くのは技量的に難しかったし、中途半端な内容になるのも嫌だったので、思い切って記事を独立させて書くことにする。 まず、マリカについてだ

    • 『この村にとどまる』(マルコ・バルツァーノ/著、関口英子/訳 新潮クレスト・ブックス)

      生まれ育った土地で、ずっと変わらない平凡な暮らしを送りたかっただけなのに 初読後の感想がこうだ。 「始めから終わりまで理不尽しかないというのは一体どういうことだ」 胸中で言葉にならないいろいろな何かをどういう形で自分に納得させればいいのか、3回読んだ後でも答えは出ない。 オーストリア、スイス、イタリアの国境沿いにあったクロン村。 第一次世界大戦後にオーストリア=ハンガリー帝国からイタリアへ割譲されたという背景があり、イタリア領ながらドイツ語が母語として話されていた。

      • 『生きる力 森田正馬の15の提言』(帚木蓬生/著 朝日新聞出版)

        手持ちランタンみたいな優しい本 主に大正から昭和期にかけて、日本における精神医学の発展に携わった森田正馬。 彼は既存の治療法をもとに試行錯誤を繰り返し、やがて神経症に対する独自の精神療法である森田療法を編み出しました。 本書には森田療法の根底にある大切な考え方15選について、平易かつ親切な筆致で著されています。精神療法について学んで何になるの、ただ難しいだけなのでは、と敬遠するのはもったいない。筆者が「神経症的な要素は誰もが大なり小なりもって」おり、森田療法は「神経症とはい

        • 『スイマーズ』(ジュリー・オオツカ/著、小竹由美子/訳 新潮クレスト・ブックス)

          変わりゆく時の中で、我々は何を見つめる 水の中では、世界が変わる。 身体の動きも、時間の流れも緩やかになって。 水は優しい。我々の身体にひたと寄り添い、包み込み、一体となる。 やがて自らの中にまで、青く澄み渡る水が満ちていくような静謐な空間。 つかの間の万能感すら得たような心地になる。 ほとんど止まっているかのような時の中で、清らかな水とともにあることは、神秘すら覚える。 自分には、地下のプールに通い詰めるスイマーズの心理に共感できる部分が多くある。 人生の中でこのような時

        『この村にとどまる』~娘のゆくえについて~

        • 『この村にとどまる』(マルコ・バルツァーノ/著、関口英子/訳 新潮クレスト・ブックス)

        • 『生きる力 森田正馬の15の提言』(帚木蓬生/著 朝日新聞出版)

        • 『スイマーズ』(ジュリー・オオツカ/著、小竹由美子/訳 新潮クレスト・ブックス)

          自己紹介します

          はじめまして、あおと申します。 こちらに来た理由は、自分が読んできた様々な本についての所感を書き留めておきたいと思ったからです。 子どもの頃から読書は好きだけど、感想を述べるのは苦手だし嫌いだし…という人間でした。 しかし、精神科医である樺沢紫苑先生の書かれた『読書脳』(サンマーク出版)を読んだ折、「読んでも忘れてしまう読書」は「ザルで水をすくうようなもので、時間の無駄」という衝撃の言葉に心を刺し貫かれ、そこから一念発起して読書感想文を書き始めました。 これまで別のサイトで細

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