ペルセフォネーのうた｜詩

「喜びの種子は粗く、容易に挽ひかれる」
と、彼かのひとは言いました

絹の肌ざわりをした悲哀のみを
素肌にまといかけ
天女は横たわり
貴あてやかなるまなざしで
彼の心に 灯火を供そなえた──

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わたくしが
お教えできるのは
悲しみの秘儀だけ


心の襞ひだに
身体の脆もろいところに突き立った傷
大切なものを失くした日の寄る辺なさ

細く嶮けわしい人生の旅路も
いつか訪れる終わりの刻ときも

それが不安なのなら
あなたの心の奥津城おくつきに眠る
一番 澄んだ寂しさを
ここに置いていって下さい

わたくしが預かるのは
あなたの形代かたしろ

その
月の光でできた
やわらかなさざ波をこうして抱いて

母の慈しみと
恋する女のひたむきさで
護り抜きましょう

あなたが味わう悲しみのうち
ひとつとして
わたくしに看過みすごされるものはなく
またひとつとして
ともに唏なかれぬものはありません


人目を忍んでこらえた涙は
すべてここに集まり
泉のように静かな水文すいもんを揺らして
浄めレテの水となり
あなたがここに還るのを待つ


やがて
その泉の水を浴び
原初の青い炎を眼差まなざしたあと

魂の双子として
ふたり寄り添い
永久とわの眠りに誘いざなわれましょう

滅びゆく身体の痕あとに
静けさだけを 遺のこして

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個人的に、ギリシャ神話で一番好きなのが、この女神。冥王妃ペルセフォネーです。

私が思うペルセフォネー様はこんな感じのお方です。

今月中に公開すべく鋭意準備中の（間に合うよね💦）「アモールとプシュケー」にも、わりあい重要な役どころとして登場なさいますので、個人的にとても楽しかったです。

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そして、誤解のないように断っておかねばなりません。この詩の骨子は私の発案ではなく、オスカー･ワイルドとヘッセのお言葉を頂戴し変換した、いわば*詩による読書感想文*ですm(._.)m　オマージュ？でいいのかな？？

冒頭の「彼のひと」＝ワイルド、「ひとつとして看過ごされるものはなく」の連がヘッセ由来です。ヘッセというより、イエスさまかな？

そして、表層のイメージ（見かけ）は、古典派やアカデミスムの絵画から拝借しました。