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解離ともう一人の自分

この経験はこれまで生きてきた中で初めての体験であった
夢ではなく現実に起きた紛れもない事実である

まず、視界が歪む
ぐるんと目が回る感覚だ

そして視界のところどころにブロックノイズが走り出した
明らかにコンピュータのそれのように
自分自身を疑った
人間とは何だ?と
脳とは?心臓とは?血とは?肉とは?骨とは?
そんなことを考えていたが答えが出る間もなく

次に聴覚が開放された
頭の中だけにしか聞こえない音
高低を繰り返しながら猛スピードで鳴る音
今まで聞いてきた音、聞こえていた音は
音ではなかったのかと疑った

鮮やかなピンク、眩しい黄色、綺麗なブルー
時々ブラック
様々な色が忙しく走ってこちらに向かってくる

そして、自分の体の中に入ったのだ
血管を通って、足が無くなり、腕も
髪も頭も無くなりついには目だけになった
血管の中を目玉である自分が泳いでいる

自分自身が溶けて無くなる感覚

得体の知れない怪物になったかのような感覚

すると、また視界が切り替わり
どこかの砂漠の砂の拡大図
どこかの葉っぱの拡大図
どこかの海のサンゴ礁の拡大図
どこかの花の拡大図
髪の毛の拡大図
ヘモグロビンの拡大図

何も意識してないのに次々となにかの拡大図が視界全てを覆って出てくる
訳が分からない、そう思った矢先
また場面がぐりんと回って切り替わった

目の前にもう一人の自分が真っ赤な海と真っ赤な空を背景に黒ずくめで目玉だけ光らせて立っていた
目線を逸らしてもどこを見てもそいつがいる
ずっとこちらを見ている
なにか言いたそうだ
しかし、何も言わない
シンプルに恐怖を感じた、自分自身に対して
この世で最も恐ろしいもの、それは自分自身だと
そう気づいた瞬間

宇宙の星々のような、脳の中のネットワーク構造のような
黄色くて眩しい光が解き放たれた
絶望のあとの希望とはこのことだと

この世の真理を少しだけ覗き見したかのようなそんな感覚であった

そして、段々と視界がこの偽りの世界に戻っていく
ぐるんと回りながら
初めはあんなに戻りたいと思っていたのに
少し真理を覗いただけで、もう偽りの世界は嫌だとそう思った

しかし、この世は残酷だ
コンピュータの強制終了のように
強制的にこちらの世界に引き戻された
この世界はディストピアだ


あぁ、真実は美しい

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