甥と義母と義母

 霊能力者・宜保愛子さんのお子さんが結婚したら、そのお相手にとって宜保さんは義理の母親にあたるわけなので「こちら義母の宜保です」「どうも義母の宜保です」なんてやりとりをしていたのかな。

 それは全然関係なくて、義母がわたしと大学生の甥っ子 に「お前ら腕相撲で対決せえ」とけしかけてきて。

 いやいやロートルが大学生に勝てるわけないじゃんとか思っていたら、甥っ子が急に「おじさん勝つ自信ないんじゃね?」とか煽ってくるという。

 その辺りは前回の記事『甥と義母と背くらべ』に詳しいんだけど、そんなものを読んだところで皆様の人生におかれましては何の影響もない些事なので割愛させていただく。

 話を戻すけど、酷だ。こっちは50歳手前。この年になると「あー今日むっちゃいい調子!!」という日はない。どこかしらの調子が悪い。筋力だって衰える一方だ。

 かたや甥っ子は現役バリバリの男子大学生。圧倒的に若い。しかもラグビー部。二の腕が生ハムの原木くらい太い。これは強い。勝てるわけがない。

 でも生ハムの原木を武器として使っていいならどうかな。生ハムの原木って、あれ要するに豚の足だから。豚の足で殴られたら痛いし精神的ダメージも大きいはず。だって豚の足だから。勝てる。これは勝てるぞ。でもこれは腕相撲じゃなかった。

 結論としては、甥っ子とは半年後に腕相撲で対決する事と相成った。ビビって逃げても伯父としての威厳に関わるし、かといって今この場で立ち合っても勝てる可能性は万に一つもない。

 これからの半年で鍛えに鍛えれば、勝てないまでも善戦くらいは出来るかもしれない。

 でもこの対決が実現することはない。なぜなら半年後、わたしは日本にいない。仕事の都合で3年ほどブラジルのアマゾンに行くことが決まっている。

 だから義母とも甥っ子とも、今日を最後にしばらくは会えない。日本にいないから対決も出来ない。以上。残念。

 卑怯? おいおい。いくらわたしがアマゾンに行くからといって、卑怯呼ばわりはないだろう。秘境だけに。フフ……。

 真面目な話をすると、わたしのこの卑怯な姿を見せることも、これから社会という荒波に漕ぎ出す甥っ子のためになるのではという深慮遠謀があってことだ。

 是非こんなわたしを反面教師にしろと。わたしがお前にしてやれることは、大人の汚さを教えることだけだと。清濁併せ呑むことも時に必要だと。

 わたしとしても泣いて馬謖を斬る思いだ。

 ちなみにこの話は、半年後に対決するところと、わたしがブラジルのアマゾンに行くというわずかなフィクションを除いてほぼ実話だ。

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