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高校野球と夏休み

夏と言えば、甲子園。甲子園と言えば……あだち充さんの漫画『タッチ』を思い出す。子供の頃、夏休みシーズンにはテレビで再放送をしていた記憶がある。小学生~中学生時代の私はそれを毎年欠かさず観ていたなあ。タッちゃんとカッちゃんと南ちゃん達の出会いと別れ~甲子園に行く流れを何度も観て心を揺さぶられた(通算5回以上は観ているはず)。且つ、漫画本でも熟読していた結果、大事なシーンの台詞は覚えてしまった。それくらい、『タッチ』と甲子園が大好きだった。大事なことは『タッチ』から学んだかもしれない。……何を学んだかは忘れてしまったけれど。

『タッチ』あだち充(写真はお借りしました)

大学生の頃、どうしても甲子園球場で高校野球を観戦したくて、球場に足を運んだことがある。夜行バスに乗り込み、球場に向かった。へとへとになった頃に到着し、チケットを買うために朝から甲子園球場の前で体育座りをして並んだ。お尻がとても熱かった覚えがあるから間違いない。

ツタが絡まる甲子園球場は、『タッチ』で描かれていたあの球場の絵と同じだった。試合開始の随分前に入場し、カンカン照りの観客席に座り込んで試合開始を待った。猛暑に負けられない、と体力をつけるためにパッケージが黄色と黒の縞のタイガース弁当を食べた。

でもやっぱり熱さに負けて、かき氷を買った。さあ食べようとスプーンですくおうとしたその瞬間、かき氷の山の部分(氷山の一角だ)が丸ごと地面に落ちた。足元でみるみる解けていくレモンシロップがかかった氷山を見つめながら、「甲子園球場は、なんて厳しい場所なんだ。今日は厳しい戦いになるにちがいない。」って思った(……ただの不注意だ)。

あ、ちょっと待って。話を戻します。

私が甲子園を好きな理由は、選手達が一生懸命だからだ。一生に一度の青春を野球にかけて、多くの選手は将来をかけて全力で立ち向かっていく。悔しい時は悔しさを、嬉しい時は嬉しさを表現する真っすぐなその姿が清々しくて、眩しくて、心を奪われるのだ。

……この舞台に立つためにどれほどのことを乗り越えてきたんだろうか?どれだけの人に支えられてきたんだろう?時には迷ったり投げ出したくなったりしたのではないだろうか?……私はその集大成を見せていただいているんだなと思うと感慨深い。もうそれだけでお腹いっぱいで、(自分の)涙で滲む高校球児たちの姿に鼻をかみながら「……何でもいいから、怪我しないように頑張って。」と祈っている自分がいる。静かに手も合わせてしまう。

あの日の甲子園球場で観戦した試合が何処と何処の学校の試合だったか、勝敗はどうだったかは忘れてしまった。ただただ、眩しかった(選手も、もちろん太陽も)。羨ましいくらいに眩しかった。

......全力でやりきった人にしか見ることのできない世界が、必ずある。これは野球に限らない。学生、社会人に関わらず言えることだと思う。もちろん、全力でやったとしても結果が伴わないことだってある。だけど、出し切った先にはかけがえのないギフトが待っているはずだ。

夏の甲子園を観ているとそんな大切なことを思い出す。そして襟を正して自分に言いきかせるんだ。「手を抜くな。どうせやるなら、全力で。」それから……「どうせやるなら、楽しんで。」って。

お付き合いいただきありがとうございました。

編集:鈴きの彩子 
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