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古い台所③

 壁は緑色の壁紙を貼った石膏ボードで、その上に自分たちで白い漆喰を塗ることにきめました。漆喰はホームセンターに売っているDIY用の、練られていてすぐ使えるものを使用しました。
 広さ役10畳程の壁は、初めて漆喰を塗る練習にうってつけでした。幸い石膏ボードの壁なので、壁紙を剝がさずに直接その上に塗ることにしました。これが砂壁だったら、固める処理などが必要でさらに手間がかかったと思います。マスキングテープを張り、思い切り大胆に塗っていきました。コテの跡や塗りむらがあっても、それも味になると言いながら作業を楽しみました。
 何か希望がある時は、思い出してもキラキラしていますね。今も塗り跡を見ては、頑張ったよねとその時の話で盛り上がります。

 初めての試みでしたが、土日の休みを利用して2日で塗り終えることができました。
 壁を漆喰にした事は大成功だと思います。明るくなったのはもちろんのこと、何とも言えない柔らかい温かみのようなものが醸し出されました。
 家は純和風造り。漆喰塗りのキッチンは家の雰囲気にもピッタリでした。
 実際自分たちで漆喰塗りの経験をしたことで、新たな気づきがありました。建築時に塗られたであろう他の部屋の漆喰が、あまりにも美しく塗られている事に今更ながらに驚くばかりでした。
 佐官さんの技術は素人の私たちには比べる事すら失礼ですが、なぜ今まで何とも感じなかったのかが不思議なくらいでした。

 この経験を経て、いつか茶の間の壁も漆喰を塗ろうときめました。言葉自体が珍しくなりつつある現在でも、半世紀前に建てられたこの家には、ちゃんと「茶の間」が存在しているのです。

 キッチンの床と壁が白くなり、構造的な大掛かりな作業はいったん終了です。でも、まだまだすることはたくさんあります。天井に一つだけの電灯は、漆喰を塗ってもやはり寒々しさを感じさせました。ところどころに点在するものを置くための台などは、ちぐはぐさを感じました。収納場所がないために出しっぱなしにしているプラケースなど、とても落ち着かない印象を与えていたのです。

 出したままの物は、ホコリをかぶっていました。日に焼けて色が変わったもの、変質してしまったものなど、もう役目を終えたものもかなり混じっていました。夫に確認して捨てられるものは処分しましたが、捨てられないものはまとめて吊り棚に収めました。
 
 ものがなくなりやっとテーブルや灯りの位置を考えられるようになったのです。





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