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応接室

「応接室」は玄関の横にありました。
昭和の家は、当時流行ったシャンデリアやマントルピース、応接セットなどを置く部屋があり、そこを「応接室」という来客用の部屋にしている家も多かったのです。

この家もマントルピースはなかったものの、応接セットの重厚なソファやテーブル、鳩時計など時が止まったようなものがそのまま置いてありました。
床は張り替えたそうなので大丈夫なのですが、壁は黄土色と言えばいいのか、もう拭いても取れない長年の汚れやシミでボロボロでした。

天井は二段天井で、和風のシャンデリアがついていたそうですが、それも壊れて事務所のような電灯がつけられていました。天井の四隅にはダウンライトがついています。
昔はここで、お客様との楽しい時を過ごしていたのかもしれません。

とにかく住みながらあちこちと修繕やDIYリフォームをしていたもので、またその広い部屋をやらなくては・・・と思うと少し気が重くなるのでした。なぜなら、その部屋はもはや使われておらず、今後も使う頻度がどれくらいあるのだろう・・・と疑問に思っていたからです。

ただ、物置として使うにはあまりにも惜しい部屋でした。私がこの家に来る前に、新たにこの部屋から庭につながるデッキを作ってもらっていました。キッチンからは少し離れているけれど、広い窓から一面に庭と遠くの山が見える眺めは、この家の中では最高の部屋だったのです。

「茶の間」はキッチンの続きの部屋にありましたので、ここは第二のリビングにすることに決めました。

何か物があるところに新しく部屋を作るとき、どうしても以前あったものを処分するなりして、そこからどかすことになります。
部屋が心地よくなるかどうかは、以前のものと理想の空間とのせめぎあいです。
モノを多く残す決断をすると、理想の部屋からは遠ざかります。
夫にとっては両親が買いそろえ、愛でてきたものです。処分するかどうかはすべて夫に委ねました。

幸い外には小屋があるので、使わないものを入れておくスペースは充分です。私たちは応接セットを小屋に運び入れました。

大きな食器棚が二つ置いてあったので、一つは処分し、もう一つは上下を分けて、下部だけ収納として使うようにします。
上部のガラス戸のほうは廊下(と言っても六畳ほどの広さ)で飾り棚として使用することにしました。
高さがなくなったことで圧迫感がなくなり、リビングのイメージも湧いてきました。

通販でノリ付きのすぐ貼れる壁紙を購入し、一日で貼り終えました。色はシンプルな白です。少し刷毛塗りのような模様が入っていますが、ほとんどわかりません。
いつも思うことですが、壁をきれいにするだけで、こんなに部屋の雰囲気は変わるのだと感心します。古くて汚れているから、賃貸だからどうしようもないと考えるのではなく、壁紙だったり、漆喰だったり、どちらも無理なら白いカーテンなどをかけるだけでも、雰囲気は良くなるのではないでしょうか。

応接セットの代わりに、ごろ寝ができるゆったりとしたソファを買いました。
テーブルは以前から使っていた古いものを置きました。
とりあえず、何とか落ち着く空間の出来上がりです。


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